2012 Fiscal Year Research-status Report
ナメクジ嗅覚中枢におけるGABAニューロンの振動活動調節・回路再編成機構
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23570099
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
小林 卓 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (50325867)
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Keywords | GABA / oscillatory network / laminar structure / olfactory center / slug / electrophysiology / plasticity / network reorganization |
Research Abstract |
陸棲の軟体動物であるチャコウラナメクジ(Limax valentianus)は脳の神経ネットワークが比較的シンプルな割には嗅覚忌避学習が可能なので記憶・学習の研究に良く用いられてきた(Gelperin 1975)。特にナメクジの嗅覚/記憶を司る前脳葉は層構造をしており、前脳葉ニューロンの同期的な振動活動はにおい情報や記憶をコードするとされている(Gelperin and Tank 1990)。 一方、哺乳類の嗅球、皮質、海馬といった脳層構造で発生する振動活動(いわゆる脳波)が、様々な認知機能に深く関係すること、そしてこれらの振動活動の発生と周波数調節には抑制性のGABAニューロンが必須かつ重要な働きをすることは既知である。ナメクジの脳にもGABAニューロンが存在すること(Cooke et al. 1985)が示唆されていたが、研究代表者らによって(1)前脳葉の線維層へGABAニューロンからの入力があること、(2)前脳葉内外にそれぞれ少数のGABAニューロンが存在すること、(3)GABAが前脳葉の振動周波数を変化させること、(4)前脳葉ニューロンに対してGABAが興奮性の神経調節因子として働くこと、(5)前脳葉ニューロンにおけるGABAの作用およびネットワーク再構成能力に領域差があること等が新たに分かってきた(Kobayashi et al. 2008, 2012a, b)。 前脳葉内では多数のニューロンが層状に並んでいるが、その入出力経路は比較的シンプルであり、「脳層構造での振動活動変化がどう行動に反映されるか」を調べる上ですごく適している。これまでブラックボックスであった前脳葉内ネットワークをGABAニューロンに注目して詳細に調べることにより、GABAニューロンの新しい役割だけでなく、新しい記憶獲得のメカニズムおよび戦略の一端が解明されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23-24年度の研究目標についてはおおむね予定通りに進展している。これまでに、1. GABA免疫染色による前脳葉の外からの入力線維と細胞体層のニューロンの分布と投射様式の解析、2. 前脳葉ニューロンの分散培養とCa2+イメージングを組み合わせた振動活動に対する網羅的なGABA受容体の薬理学的解析、3. 単一ニューロンからのホールセル記録による詳細なGABA神経調節機構の生理学的解析、以上についておおむね完了し、これらの結果を原著論文にまとめてJ Neurophysiol誌(Kobayashi et al. 2012)に発表した。そして、4. 前脳葉ニューロンの分散培養におけるネットワーク再構成能力の解析についてもすでに著しい領域差が見つかっており、電気生理学的手法を組み合わせて現在さらに詳しく解析中である。 また、前脳葉の振動活動に対するGABAの調節機構に関する薬理学的解析結果をActa Biologica Hungarica誌(Kobayashi and Ito 2012)に、セロトニンによる振動調節と領域差および動物種差について共著者としてBrain Structure and Function誌(Elekes et al. 2012)に発表した。以上ことから、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
多点電極記録システムおよび前脳葉ニューロンの分散培養細胞系を用いることにより、より網羅的に解析を行う。前脳葉内の振動ネットワークの詳細な解析(マッピング)を行い、同期的振動活動の生理学的な意義を考察する。 1. 前脳葉ニューロンの分散培養による網羅的な薬理学的解析、および単一ニューロン記録における生理学・形態学的解析:最近の研究結果から、GABA以外のコリン作動性ニューロンや神経ペプチド含有ニューロンによる振動ネットワーク調節の重要性にも注目している。これらの系とGABAとの相互作用についても調べることにより、前脳葉内の機能的領域差についてひきつづきさらに明らかにして行く予定である。 2. 前脳葉ニューロンのネットワーク再構成能力とその領域差に関与するGABA神経調節機構について:上記の網羅的な薬理学的解析をより精密に行うこと目指しながら、分散培養方法をさらに改良・検討しゆく。これまでに前脳葉ニューロンの性質にはさまざまな領域差があるとされ、申請者は実際に、前脳葉ニューロンのネットワーク再構成の程度に領域差があることを見出している。この領域差とGABAニューロンの前脳葉内分布との間に相関がみられることから、ネットワーク再編成とGABAとの間に新規の関係性がみつかることが期待される。前脳葉内の機能的領域差を明らかにすることにより、前脳葉内を流れる情報の方向性、そして可塑的変化を引き起こすための基礎的なしくみが明らかになると考える。 3. においの嗅ぎ分け・嗅覚学習におけるGABAニューロンの働きとその領域差:触角と脳のsemi-intact標本を用いることで、前脳葉ニューロンの変化とその出力パターンの変化との間の相関を調べる。そして最終的には神経振動ネットワークにおける可塑的変化と動物の行動変化との関係を結びつけたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
GABAに関する薬理学的な実験を行う際に必要となるGABA受容体の作動薬および阻害薬、イメージングを行うためのCa2+インジケーター、そして免疫染色を行う際の抗体等の試薬類、培養細胞や試薬を調整するためのディスポーザブル器具、そして電気生理記録用の電極や材料が常に必要である。特に、多点電極記録用の電極の購入とsemi-intact標本の実験系の構築に費用がかさむ予定である。以上で本研究課題の主な実験は実施可能であるが、論文投稿費用および学会費用(国内および国際学会)にも使用したい。また、解析用のコンピュータ(Windows XP)が老朽化しているので新調する。
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Research Products
(6 results)