2012 Fiscal Year Research-status Report
熱帯・温帯域のトゲダニ目の多様性研究と記載分類学者養成への取り組み
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23570102
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
高久 元 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40236203)
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Keywords | 分類学 / 生物多様性 / トゲダニ目 / 記載分類 |
Research Abstract |
今年度は国内では北海道内10地点でマルハナバチ類に便乗するヤドリダニ類,トゲダニ類などの採集,および北海道内6地点で土壌自由生活性ヤドリダニ類の採集を行い,標本を集め,分類学的研究を行った。マルハナバチ類に便乗するダニ類に関しては,ヤドリダニ科3種,マヨイダニ科3種,トゲダニ科2種の計8種を確認し,多くは日本未記録種であった。また土壌性ヤドリダニ類に関しては,4属8種のダニ類が確認され,うち3種は道内未記録または未記載と思われる種であった。海外では10月にインドネシア・カリマンタン島で昆虫便乗性ハエダニ類の採集を行った。調査はインドネシア科学院のハルティニ氏,ディアン氏の協力の下,西カリマンタン,南カリマンタンで実施され,西カリマンタンで9種88個体,南カリマンタンで8種204個体のハエダニ類が確認された。いずれも既知種であったが,ハエダニ類のインドネシアにおける分布を明らかにするうえで,重要な基礎データとなった。 また今年度は8月に京都大学農学部の実験室を借りて,第3回土壌ダニセミナーを実施した。計7名と受講者は少なかったが,いずれの受講者も熱心に取り組み,活気のあるセミナーとなった。講師には私以外にも3名に協力していただき,土壌性のダニ類を中心に抽出方法,標本作成方法,分類形質,同定方法について2日間に渡って講義,実習を行った。 論文に関しては,東南アジアのハエダニ類に関する記載論文3編,国内のトゲダニ類に関する論文2編を発行するとともに,学会発表1回,北海道大学総合博物館主催のシンポジウムでの発表1回を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道内で幅広く,様々なトゲダニ類を対象に採集することができ,十分な調査を行うことができた。また,国内で若手分類学者養成のための土壌ダニセミナーを開催することができた。業績に関しても5編の論文発行,2回の学会およびシンポジウムでの発表があり,今年度の研究計画をおおむね順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は,北海道内での土壌性,昆虫便乗性のハエダニ類,トゲダニ類,ヤドリダニ類を中心に調査を継続し,本州,特に東北に調査範囲を拡大し,日本国内のダニ類の多様性を明らかにしていきたい。調査を通じて明らかになった未記載種,未記録種に関しては,随時記載論文を作成し,国内外の専門誌への投稿を目指す。インドネシアのハエダニ類の多様性研究に関しては,インドネシア科学院のハルティニ氏,ディアン氏と共同で調査を進め,大スダン列島のハエダニ相を明らかにしていく。特に調査の手薄なカリマンタン島,スマトラ島,スラウェシ島での採集を行っていきたい。 若手分類学者養成に関しては,現在,インドネシアのハエダニ相の調査に並行して,ディアン氏の研究・論文指導を行っており,今後も指導を継続する。また,トゲダニ類の分類・同定に関するセミナーに関しても継続して行い,トゲダニ類の分類学への関心を高めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は研究材料であるトゲダニ類の調査・採集のための旅費に研究費の多くをあてる予定である。北海道内での調査に加えて,本州,主に東北地方での採集を予定している。また,研究協力者とともに,インドネシアのカリマンタン島での調査・採集を予定している。これまでの成果発表のため,日本ダニ学会大会への参加を予定しており,その旅費としても使用する予定である。 旅費以外には,採集,標本作製に必要なガラス器具類,試薬類などの消耗品費,投稿を予定している論文の別刷代金,超過ページ代金などに使用する予定である。
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Research Products
(7 results)