2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム情報を用いた生物種判別と集団遺伝解析に対する統計的手法の開発
Project/Area Number |
23570108
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
徐 泰健 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特任助教 (60401189)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
|
Keywords | 分子進化 / 集団遺伝 / 分岐年代 / 進化速度 / ベイズ推定 / 刺胞動物 |
Research Abstract |
分子進化や集団遺伝の研究ではDNA塩基置換情報を用いた解析がよく行われる。タンパク質コード遺伝子の解析において、アミノ酸を変化させる非同義DNA置換とアミノ酸を変化させない同義DNA置換を適切に利用することにより、自然淘汰の検出や集団の履歴などの推定が可能となる。初年度の研究として、非同義置換・同義置換を利用した分子進化データ解析を行い、これらの統計的な有効性を検証した。48種の刺胞動物から得られた13種類のミトコンドリアタンパク質コード遺伝子を用いて系統関係を推定し、コドンモデルとDNA塩基置換モデルを適用して分岐年代と同義・非同義置換の進化速度を推定した。刺胞動物の祖先年代は、コドンモデルとDNA塩基置換モデルの適用で各々741(686,819)MYA、842(796,895)MYAと推定された(MYA : Million Years Ago;格好は95%ベイズ信用区間)。推定された系統樹の枝の長さが違うため、両モデルの推定結果はやや違うが、95%信用区間が重なることと先行研究で報告された違いを考慮すると比較的に合致する結果であるといえる。また、刺胞動物の中で相当な分子進化速度のバラツキがあることが分かった。従来はAnthozoaの分子進化速度がMedusozaより遅いと思われたが、Anthozoaの一部の種はMedusozaの一部の種より進化速度が速いことが明らかになった。これは、進化速度の定量化は精度よい統計的手法に基づくべきであることを示唆する結果である。系統関係推定において、RobustグループとComplexグループからなるScleractiniaグループの単系統が100%の事後確率で支持された。また、Anthozoaの単系統が否定され高い事後確率でMedusozoaグループとOctocoralliaグループの単系統が支持された。
|