2011 Fiscal Year Research-status Report
アジ科魚類各属の系統類縁関係とヨロイアジ属群各種の分類学的系統学的研究
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23570114
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
木村 清志 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (00115700)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アジ科魚類 / 系統 / 分類 / 国際研究者交流 / インドネシア / 国際情報交流 / フランス |
Research Abstract |
本年度は,西表島および沖縄本島,インドネシアのビトゥン周辺で現地研究者の協力,および本学大学院生の協力のもとに,魚類採集を行い,多くのアジ科魚類の標本を作製し,分子生物学的研究に使用する筋肉組織の採取や生鮮時の外部形態の撮影を行った.標本観察は,三重大学水産実験所に保管されている標本についても行った.タイプ標本調査は,パリ自然史博物館およびウィーン自然史博物館に出張して行った.また,フランス滞在中には,地中海産の標本を得た. これまでに入手できた組織標本に基づく分子生物学的解析の結果,インド洋-西太平洋に分布するアジ亜科魚類は,Carangoides praeustus,ホソヒラアジ属,コガネシマアジ属,マブタシマアジ属,ナンヨウカイワリ+クロヒラアジ,オキアジ属,イトヒラアジ属,ヒシヨロイアジ+タイワンヨロイアジ+Carangoides talamparoides,インドヨロイアジ+マルヒラアジ+アンダマンアジ+ホシカイワリ,リュウキュウヨロイアジ+クボアジ属+ヒシカイワリ属,イトヒキアジ属,メアジ属,マアジ属,ムロアジ属,カイワリ属,シマアジ属,ギンガメアジ属,オニアジ属,Caranx bucculentusの19群に分けることができた.さらに形態学的には,カイワリ属は脊椎骨の形態からヨロイアジ属と明瞭に異なり,またC. praeustusは鋤骨歯の形態から他のヨロイアジ属とは差がみられた. 今回の結果は,従来考えられていたアジ科の構成を大きく変更するもので,属の構成に関しては,新たな属の創設,従来の属の無効化など,本科魚類の系統類縁関係に対して,極めて重要な情報を提供することとなった.また,形態的な属の特徴についても,大きな改変が必要となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究の目的は,主としてインド洋―太平洋域に分布する属の有効性と系統関係について明らかにし,特に形態的類似性が高く属の異同が問題となっているヨロイアジ属,カイワリ属,イトヒラアジ属(以下ヨロイアジ属群と呼ぶ)について属内の種の構成とその系統を明らかにすることである.前述のとおり,本年度の研究からインド洋―太平洋域に分布する属の構成については分子生物学的にほぼ掌握でき,また上記3属の問題もほぼ明らかにできた.しかし,未だタイプ調査については不十分なところもあり,また,形態学的研究についても,少々不十分なところもある. しかし,最大の目的であるインド洋―太平洋域のアジ科魚類の属構成については十分な結果が得られていることから,本研究はおおむね順調に進展していると考えた.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に準拠して,今後も海外の博物館におけるタイプ調査とインド洋-太平洋域における標本採取(特にDNA標本)を行う.また,研究室内では引き続き分子生物学的解析を進めるとともに,特に形態学的観察を重点的に行い,上記の属の特徴を形態学的に明確にすることを目的として進めていく. このような結果を取りまとめて,1)主としてインド洋-太平洋に分布するアジ科魚類の属について,その有効性および属間の系統関係を分子生物学的手法を主体とした手法で明らかにし,有効属の形態的特徴を明確にする.2)ヨロイアジ属群について,属内の種構成をタイプ標本に基づく解析から明らかにしたのち,各種の形態的特徴を明らかにし,さらに分子生物学的手法に基づいてその系統関係を明らかにする.また種間の系統関係から,分散過程を推定する.一方,形態学的特徴から同定を容易に行うために,本属群各種の検索図を作成する. なお,今年度2,368円の未使用額が生じた.これは,大量の標本処理・整理のために当初の予定よりも多くのアルバイト学生を雇用したためで,この増額分に対応して消耗品費と旅費を減額したが,人件費の単価が大学で規定されいるため,比較的少額の未使用額が発生した.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費は主として分子生物学的研究に要する試薬類や実験用消耗品,タイプ標本調査用の旅費,標本採集用の旅費,成果発表用の旅費,標本整理や採集調査時の研究補助,およびDNAのシーケンスに要する解析費を予定している.それ以降の研究費についても,次年度とほぼ同様の研究費使用計画をもっている.なお,これらの使途については,当初の計画通りで,出張先を除いて,大きな変更はない.出張先については,これまでの標本の入手状況,現地の研究者の都合などによって,変更する場合がある. なお,前年度の未使用額はDNAシーケンスの標本数を当初予定よりも増加させ,この増額分として使用する予定である.
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Research Products
(2 results)