2012 Fiscal Year Research-status Report
アジ科魚類各属の系統類縁関係とヨロイアジ属群各種の分類学的系統学的研究
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23570114
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
木村 清志 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (00115700)
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Keywords | アジ科魚類 / 系統 / 分類 / 国際研究者交流 / マレーシア / 国際情報交流 / オランダ / ドイツ |
Research Abstract |
本年度は,沖縄島,鹿児島県与論島,およびマレーシアにおいて魚類採集を行い,アジ科魚類を多数採集した.これらの標本は,分子生物学的研究に用いる筋肉組織片をアルコールで保存し,外部形態のデジタルイメージを保存した後,ホルマリン固定し,現地研究者の許可のもと三重大学水産実験所に輸送して,分子生物学的および形態学的検討を加えた.また,オランダ国立自然史博物館およびドイツ・シュツットガルト州立博物館において,タイプ標本調査を行った. 今回新たに採集された標本を加えて,従来形態学的およびタンパク質アイソザイム解析から認められてきたアジ科内4亜科(アジ亜科,コバンアジ亜科,イケカツオ亜科,ブリモドキ亜科)の妥当性について分子生物学的に検討した.この結果,従来どおりこの4亜科に分けることの妥当性が認められた.但し,コバンアジ亜科とイケカツオ亜科との近縁性が強く示唆された.アジ亜科内では大きく次の8系統群に分かれた.1-メアジ属+カイワリ属+シマアジ属;2-ギンガメアジ属+オニアジ属:3-ホソヒラアジ属+Carangoides praeustus;4-マブタシマアジ属;5-イトヒラアジ属+ヨロイアジ属(一部)+オキアジ属+クロアジモドキ属;6-イトヒキアジ属+Selene属;7-ヨロイアジ属(一部)+クボアジ属+ヒシカイワリ属;8-マアジ属+ムロアジ属.この内,5,6,7は比較的近縁で単系統性を示したことから,これらについてさらに系統解析を行った.その結果,これらは暫定的に次の11属に区分するのが妥当と考えられた.1-インドカイワリ+クボアジ属+ヒシカイワリ属+ヨロイアジ種群;2-マルヒラアジ;3-ホシカイワリ種群;4-コガネアジ;5-タイワンヨロイアジ種群;6-Selene属;7-イトヒキアジ属;8-イトヒラアジ属;9-クロヒラアジ種群;10-クロアジモドキ属;11-オキアジ属.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,全世界のアジ科魚類を対象にして,属および種の分類学および系統学を形態学的手法と分子生物学的手法を用いて行い,それぞれの属の有効性,属間の系統類縁関係,属内の種の構成とその系統関係を明らかにすることである.また,本研究期間では,主としてインド洋-太平洋に分布する属の有効性と系統を明らかにし,さらに分類学的混乱の大きいヨロイアジ属,カイワリ属,イトヒラアジ属について,種の構成と系統を明らかにすることである.上記研究実績の概要でも述べたように,これまでの形態学的および分子生物学的解析から,この海域に分布するアジ科各属の有効性や系統関係についてはかなりの程度明らかにされた.さらに,上記3属については,未記載種の可能性も含めて概ねその概要が明らかになった.しかし,未だ形態学的に属を規定するには不十分な面もある.このようなことから,本研究は概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は先に述べたように,情報が不足している属レベルと考えられる系統群の形態的特徴を明らかにし,インド洋-太平洋域のアジ亜科について,新たな属の区分,その定義を形態学的に明らかにする.さらに,属間の系統関係をより強固なものにするため,DNA解析の領域をさらに増やす.このような結果をまとめて,最終的には1)主としてインド洋-太平洋に分布するアジ科魚類の属について,その有効性および属間の系統関係を分子生物学的手法を主体とした手法で明らかにし,有効属の形態的特徴を明確にする.2)ヨロイアジ属群について,属内の種構成をタイプ標本に基づく解析から明らかにしたのち,各種の形態的特徴を明らかにし,さらに分子生物学的手法に基づいてその系統関係を明らかにする.また種間の系統関係から,分散過程を推定する.一方,形態学的特徴から同定を容易に行うために,本属群各種の検索図を作成する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費は主として分子生物学的研究に必要な試薬類や実験用消耗品に要する経費,DNAのシーケンス解析経費,および標本採集用の旅費,成果発表用の旅費,標本整理や採集調査時の研究補助に使用する予定である.なお,これらの使途については当初の計画通りで,出張先を除いて,大きな変更はない.出張先については,これまでの標本の入手状況,現地の研究者の都合などによって,変更する場合がある.
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Validity of Scolecenchelys aoki, with a redescription of Scolecenchelys gymnota (Anguilliformes: Ophichthidae)2012
Author(s)
Hibino, Y., Kimura, S., Hoshino, K., Hatooka, K., and McCosker, J. E.
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Journal Title
Ichthyological Research
Volume: 59
Pages: 179-188
DOI
Peer Reviewed
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