2012 Fiscal Year Research-status Report
ヘビ類における頚背腺の進化:形態・行動・生理からの統合的アプローチ
Project/Area Number |
23570115
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 哲 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80271005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥羽 通久 (財)日本蛇族学術研究所, その他部局等, その他 (40109856)
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Keywords | 国際研究者交流 / 進化 / 行動学 / 爬虫類学 / 防御器官 / ヘビ類 |
Research Abstract |
本年度は台湾、ベトナム、および中国での調査を中心に行なった。台湾へは5月に赴き、国立屏東大学のTein-Shun Tsai助手と共同研究の方針について打合せするとともに、Rhabdophis tigrinusとR. swinhonisの採集を試みた。ベトナムへは9月に訪問し、ベトナム国立博物館のNguyen Thien Tao研究員の協力のもとで野外調査を行い、Rhabdophis subminiatus、Xenochrophis flavipunctatus、Sinonatrix aequifasciatus、Amphiesma buolengeri等のユウダ亜科ヘビ類を採集した。これらは京大へ持ち帰り、防御行動の実験、毛細血管網の染色、頸腺毒およびDNAサンプルの採取に用いた。ベトナム調査には、米国の協力者であるAlan Savitzky教授も随伴し、さらに日本での解析を共同して行なうとともに、今後の研究方針等についての議論を行なった。中国に関しては、まず6月初めに、成都で開催された第5回アジア爬虫両棲類学会議に出席し、ヤマカガシに関しての講演をするとともに、成都生物研究所のYezhongTang教授と共同研究を開始することを確約した。その後、10月に成都生物研究所を訪問し、Tang教授とLi助手の協力のもと、R. nuchalisを用いて、防御行動の実験、頸背腺毒およびDNAサンプルの採取、解剖による頸背腺の確認を行なった。翌年2月には台湾からTein-Shun Tsai助手がR. swinhonisの頸腺分泌液およびDNAサンプル、頸腺の組織標本、および、防御行動のビデオデータを持参して来日し、これらの解析を行なうとともに、今後の方針について協議した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の8月に研究分担者であった鳥羽通久が急逝したため、本年度は予定よりも海外共同研究者との交渉が遅れ気味でスタートした。本年度は中国との交渉を完了し、現地での共同研究もすでに開始したが、スリランカとマレーシアでの調査に関しては計画よりもまだ少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
海外共同研究者との連携を深め、各国でのヘビの採集と日本への輸送を推進する。研究代表者自らがベトナムおよび中国を訪問し、海外共同研究者とともに可能な限りフィールド調査にも参加し、ヘビの採集を試みる。さらに、渡航した際には効率的な行動実験やサンプル採取ができるよう、予め訪問先の共同研究者にはヘビの採集を依頼しておく。ベトナムで捕獲したヘビは日本へ持ち帰り、防御行動の実験、頸腺サンプルの抽出、DNA組織を用いた系統解析を行なう。DNA組織を用いた系統解析は、京都大学の大学院生およびポスドクの協力を得ながら行なう。中国に関しては、標本や組織の海外への輸出規制が厳しいので、行動実験や頸腺サンプルの抽出は成都研究所の共同研究者のラボで行なう。また、頸腺成分の化学分析も成都研究所で実施する方向で進める。マレーシアとスリランカに関しては、海外共同研究者との連携のもと調査許可を取得するとともに、研究代表者がフィールドに赴き、これまで採集できていなかった種のサンプリングを試みる。 6月21日から23日にかけては、研究代表者が主催する第6回ヘビ生態学会議を沖縄にて開催することを計画している。本会議にはベトナム、台湾、アメリカの共同研究者も参加予定であり、関係者が一堂に会して本プロジェクトの現在の進捗状況や今後の推進方向について議論する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、海外共同研究者との仲介を担当していた研究分担者の予期せぬ急逝に伴い、海外共同研究者との連絡や交渉に手間取り、結果として全体の進行が予定よりも遅れ気味となった。このため、渡航費や輸送費の執行が計画よりも少なくなった。 本年度はこの遅れを取り戻すために、昨年度の残額経費を予算に盛り込んで、渡航費、現地での補助者の雇用費、ヘビの飼育、頸腺成分の化学分析、系統解析のためのDNAサンプルの分析にかかる経費を賄った。本年度も最終的には約10万円が次年度へ繰り越しとなったが、まだ計画の遅れがあるスリランカやマレーシアの調査費として来年度の予算に計上する。
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