2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570118
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小早川 義尚 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20153588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舘田 英典 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70216985)
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Keywords | symbiosis / Hydra / Chlorella / molecular phylogeny |
Research Abstract |
ヒドラ属に属するクロレラを細胞内共生させているviridissimaグループのヒドラ6系統とそのうちの2系統から共生クロレラを除去した2系統のヒドラを用いて、宿主のヒドラの分子系統のトポロジーと共生クロレラの分子系統のトポロジーが一致すること、共生クロレラが無性生殖・有性生殖いずれの場合でも垂直伝播することを明確にし、その起源の年代やその後の進化等についてのについて考察を行って論文, (Symbiosis between hydra and chlorella: Molecular phylogenetic analysis and experimental study provide insight into its origin and evolution. Kawaida, Hitomi; Ohba, Kohki; Koutake, Yuhki; Shimizu, Hiroshi; Tachida, Hidenori; Kobayakawa Yoshitaka. MOLECULAR PHYLOGENETICS AND EVOLUTION vol.66: 906-914 )にまとめ発表した。 また、その後の研究によって有性生殖時に共生クロレラが経卵的に垂直伝搬する過程を詳細に明らかにすることができ、viridissimaグループのヒドラ間では、人為的な共生クロレラの交換が比較的自由に可能で、その新しい共生関係が長期に渡って維持されることも明らかになりつつある。さらに、vulgarisグループに属する複数のヒドラの系統においてクロロコッカムとの共生が起こり、長期にわたって維持されることも明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の研究目的の主要部分は、以下の2点である。(1)viridissimaグループのヒドラと緑藻(クロレラ)との共生の起源について、どのように始まったのか(一回の共生が起源か、複数回の共生が起源か。それぞれの場合その共生はいつ頃どこで始まったのか)を、主に分子系統学的解析を手段として明らかにする。(2)グリーンヒドラ各系統から共生緑藻を単離し、共生緑藻を除いた他の系統のヒドラに移植し定着の成否・その程度を測定する。その結果の解析により、宿主のヒドラと共生緑藻の種特異性・共生の安定性の度合いを推定する。これにより、ヒドラと共生緑藻との共進化がどのように進んでいったかを解明する。この(1)、(2)については、研究実績概要に示したように、論文として報告するに足る成果を得て、実際に論文として公表することができた。この点から考えて、本研究計画の達成度はおおむね順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
残る2つの計画は次の(3)と(4)である。(3)共生の初期過程にあると考えられるvulgarisグループと安定した共生状態にあると考えられるviridissimaグループに属するグリーンヒドラとそれぞれから共生緑藻を除去したヒドラを様々な環境条件下で飼育し、その増殖率等を測定することによって、共生による適応度の変化を推定する。その結果の比較・解析によって共生の初期過程から安定期に達するまでの進化過程の解明を目指す。(4)緑藻を共生させたグリ-ンヒドラの組織を共生緑藻の除去されたヒドラに移植することができる。そのように作成されたキメラヒドラを光強度・給餌量等の条件を変化させて飼育し、一個体内における共生緑藻を持った細胞と持たない細胞の消長を観察することによって、細胞レベルでの緑藻の共生による適応度の変化を解明する。このことは、共生の初期過程を研究する上で重要な知見となりうる。 これらの内、(3)に関しては研究対象とできる材料を確保・維持できる状態にあり、計画通りこの項目を進める計画である。ただし、(4)に関しては個体内における共生クロレラを持った細胞と持たない細胞を峻別することがほぼ不可能であることが分かり計画通り研究を進めることは困難な状況にある。そのため、主に(3)の項目についての研究を中心に進める計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)