2012 Fiscal Year Research-status Report
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23570126
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 和範 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 研究主幹 (70270410)
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Keywords | 国際研究者交流 / ロシア |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまでの調査などによって国立科学博物館に蓄積されている標本と新規採集標本に基づき、本州北東沖の日本海溝を中心とした深海性(漸深海帯から深海帯)腹足類の分類学的研究を行い、最終的に成果を新種の記載を含むモノグラフとして纏めるとともに生物地理的な考察を行うことである。 2年目となる24年度では、引き続き蓄積されている標本の検討を進めると同時に、2011年と2012年にJAMSTECによって実施された、「しんかい6500」による三陸沖潜航調査航海で採集された追加標本も検討標本に加えた。また、それらと並行してロシアの博物館や研究所に保存されている標本の調査を行った。まず既存標本の検討では、蓄積標本を精査して種レベルで分別する作業を進めた。具体的には、貝殻の形態に基づいて同定と写真の撮影を行っているが、既に論文として発表している1500m以浅の標本についても、再検討を行っている。特にTrochidaeニシキウズガイ科の一部では、東京大学大気海洋研究所のとの共同研究で分子系統解析に基づく同定の見直しも行っている。海外の博物館の標本調査では、今年度は特に日本海溝周辺の標本が多く蓄積されているロシアの幾つかの博物館と研究所において、標本の調査を行った。すなわち、モスクワのロシア科学アカデミー海洋学研究所ではビーチャジ号によって採集された多くの未同定標本を調べ、幾つかの新たな未記載種を見出した。モスクワ大学動物学博物館ではビーチャジ号採集標本に基づいて日本海溝から新種として記載された多くのタクサのタイプ標本を調べることができ、幾つかの同定の誤りを正し、新たな知見を得ることができた。さらに、サンクト・ペテルブルクのロシア科学アカデミー動物学研究所では、北太平洋と極海から得られた膨大な標本を調べることで、既知の名義タクサとの詳しい比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は4年の計画で、最終的に成果をモノグラフとしてまとめることを目指している。2年目となる本年度では、既存標本の形態に基づく分類学的研究と、主に海外の博物館に保管されているタイプや比較・参考標本の調査が中心となっている。現時点では上の概要に示したように、それらに沿って計画通りに進んでいるとみなされる。
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Strategy for Future Research Activity |
第3年度では、引き続き蓄積標本の分類学的検討を継続する。また、今年度は3年に1回開催される軟体動物の国際学会に参加して予備的な成果を報告する予定だったが、開催地がアゾレス諸島と遠方で旅費が予定を大幅に超過すること、および過去の調査によって非常に重要な標本が海外の博物館に蓄積されていることが分かったことから、退避用効果を考慮して、旅費は引き続き海外博物館の標本調査に充てることとした。分類学的検討では、貝殻に加えて解剖や内部器官(特に歯舌)の詳しい検討を開始する。海外の博物館の調査については、日本海溝の深海帯の標本が多数保存されているモスクワの海洋研究所への調査を計画している。 最終年度となる第4年度以降は分類学的研究を集中的に進めるとともに、モノグラフの完成を目指す。また、上に述べたようにニシキウズガイ科の一部のグループなど、形態的な情報のみでは詳しい分類・系統関係を明らかにすることが困難なもので、分子系統解析も含めた詳しい分類学的検討を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第3年度は、上に述べたような方針により、標本の詳しい形態学的検討と海外の博物館での標本調査に集中する。そのため、研究費の半分以上は海外への旅費に充て、残りを電子顕微鏡や組織学的研究遂行のための出費(消耗品や研究補助のための謝金)に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)