2012 Fiscal Year Research-status Report
小胞体カルシウムポンプのリン酸化中間体の異性化によるカルシウム輸送部位の構造変化
Project/Area Number |
23570130
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
大保 貴嗣 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (90207267)
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Keywords | カルシウムポンプ / カチオン能動輸送 / 筋小胞体 / ATPase / カルシウム |
Research Abstract |
Ca2+ポンプの輸送では、細胞質領域のATP加水分解と膜ドメインのCa2+輸送が共役する。本研究の目的はその作動機構を解明することである。Ca2+輸送反応回路はリン酸化中間体(EP)の形成と加水分解を経由し、Ca2+閉塞型E1PCa2からCa2+非結合型E2Pへの異性化に伴って小胞体内腔へCa2+が放出される。この異性化では、細胞質領域(A, P, N)のA(アクチュエーター)ドメインが大きく回転してP(リン酸化)ドメインと結合し、この構造変化が膜ドメインの輸送部位に伝達されCa2+gateが開く。Aドメインは膜ドメインのへリックスM1からM3にループを介して繋がっている。そこで、膜ドメインのM2へリックスからAドメインまでの領域に着目し、部位特異的変異を(100種以上)導入してこの領域内の各部分について機能的役割を調べた。その結果、AからM2までの特異的領域が、反応段階に応じて構造と長さを変化させること、またそれがEP異性化と分解、およびCa2+輸送部位の構造変化に重要であることを示した。 他方、Ca2+ポンプでEP異性化の構造変化を引き起こす原動力として静電的相互作用に着目した。P-Nヒンジ領域でイオンペアを形成する残基間、またP-N間で長距離静電的相互作用をしていると予想された残基間に変異を導入してペアの相互作用を破壊したところ、EP異性化が阻害され、同時にP-Nドメイン間の静電的相互作用(電気力線)が阻害された。したがって、静電的相互作用がEP異性化に重要であることが示された。これはPドメインにK+を結合したCa2+ポンプにおいて観察された。またK+結合はEP転換の速度を増大させ、E1PからのCa2+遊離を防いでいることが明らかとなった。したがって、この静電的相互作用は生理的条件のもと、K+結合した状態でCa2+輸送を効率的に行わせることに重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小胞体Ca2+ポンプのCa2+を輸送ではリン酸化中間体(EP)の異性化に伴い、触媒部位を持つ細胞質ドメイン(A,P,N)の構造変化が、Ca2+輸送部位を持つ膜貫通ドメインに伝達され、EPに閉塞されていたCa2+が内腔へ放出される。本研究では、まず両ドメインの連結部分のうちAドメインからM2までの領域に着目し、これが如何に伝達に関与しているかを解明する。その目的のため、この領域を構成するAドメインとM2の接合ループ、M2細胞質露出領域、およびM2膜貫通へリックスの各領域に部位特異的変異を導入した変異体を多数構築し、機能解析を進めてきた。その結果、Ca2+輸送各反応段階における各領域特有の機能的役割と重要性が明らかになった。これは研究の目的によく合致する成果である。さらに、Ca2+を輸送する重要な段階EP異性化の構造変化を引き起こす原動力として静電的相互作用の役割が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画では、小胞体Ca2+ポンプの細胞質ドメインの動きが、Aドメイン~M2などの接合部をつたって、膜ドメインにどのような構造変化を引き起こすかを解明する。そこで、Aドメインに繋がっている膜貫通へリックス(M1、M2)やCa2+結合リガンドを持つM4、M5にどのような構造変化が伝わるかを調べる。そのためには、これらの接合部に変異導入を施してEP異性化/Ca2+輸送/Ca2+結合(E1P∙Ca2→ E2P∙Ca2 → E2P + 2Ca2+in)がどのように阻害されるか、またCa2+-gateの開閉を機能解析で明らかにする。すなわち、膜filtration法によりCa2+輸送能、および中間体へのCa2+閉塞/結合量、EP異性化の過程を測定する。また実際にαヘリックスの配置がどのように配置換えするか、をモニターすることが必要となる。そこで膜ドメインのCys-less置換変異ポンプを構築し、2つのヘリックスの適切な位置にCys残基を導入する。野生型および変異体を各中間体に固定して酸化しS-S結合を形成させ、膜ドメインヘリックスの配置を解析する。以上より、細胞質ドメインの動きが、上記接合部をつたって、膜ドメインにどのような構造変化を引き起こすかを予測する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)