2011 Fiscal Year Research-status Report
食中毒を引き起こす細菌毒素タンパク質の構造生物学的研究
Project/Area Number |
23570134
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
北所 健悟 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (60283587)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 構造生物学 / 食中毒 / 毒素タンパク質 / ウエルシュ菌 |
Research Abstract |
ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)は、仕出し弁当や給食など大量調理・大量供給された食品の喫食が原因で生じる食中毒の主要な原因菌として知られている。この菌による食中毒の1件あたりの患者数は、他の細菌性食中毒と比べて圧倒的に多く、国内でも毎年30例程度の発生件数がある。本菌は芽胞形成性グラム陽性嫌気性菌で、食品とともに摂取された生菌が腸管内で芽胞形成する際に、タンパク毒素であるウエルシュ菌エンテロトキシン(Clostridium perfringens enterotoxin;以下CPEと略す)を産生する。CPEは腸管上皮細胞の細胞膜に傷害を起こして細胞を死に至らしめる毒性がある。これが食中毒時の下痢や腹痛の原因である。 申請者は、本菌が産生するタンパク性毒素(CPE)を結晶化し、大型放射光施設SPring-8のビームを利用してX線結晶構造解析することで、その立体構造を決定することに成功した。その結果、CPE分子はイモムシ様の全体像を呈しており、それぞれ頭部(D1)、体躯(D2)、尻尾(D3)に相当する三つの機能ドメインから構成されていることがわかった。D1ドメインには、腸管上皮細胞膜にあるClaudinというに受容体に結合するドメインがあり、この受容体に結合するアミノ酸残基が外側を向いていることがわかった。さらに、D2、D3ドメインには細胞膜に孔をあけると思われるβシート構造が存在し、これにより細胞膜に孔があけられるβポア形成メカニズムがあること、つまり毒素分子の凝集によってD2ドメインの構造が大きく変化して細胞膜に孔をあける膜孔が形成されることを見出した。また、CPEで見出されたβポア形成メカニズムは他のβポアを形成する毒素と立体構造のトポロジーが一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ウエルシュ菌が産生するタンパク性毒素(CPE)を結晶化し、大型放射光施設SPring-8のビームを利用してX線結晶構造解析することで、2.0Åという高分解能でその立体構造を決定することに世界で初めて成功した。このせ成果を、米国の科学雑誌『The Journal of Biological Chemistry』に掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
CPEは319残基からなるタンパク質で、その作用機構は、細胞表面への結合(C末側受容体結合ドメイン)と、その後の膜孔形成による細胞の形態変化(N末側細胞障害ドメイン)の2段階に分けられる。C末端側122残基については既に立体構造が決定されている(J.Biol.Chem., 283, 268-274, 2008)。CPEが結合する受容体は、上皮系細胞の細胞膜上にあるタイトジャンクション(TJ)を形成するクローディン(Claudin;以下Cldnと略す)である。Cldnは、細胞間バリアの中枢をなす細胞接着に必要な22kDaからなる膜4回貫通型蛋白質で、4つの膜貫通領域と2つの細胞外領域を有する。2つの細胞外領域は、54残基の第1ループと23残基の第2ループからなる。 本研究ではCPEの立体構造決定を行い、その構造的基盤作りを行う。さらにCPEーCldn複合体の結晶化を行い、立体構造の解明を目指す。これにより細胞膜上のCldnとCPEとの相互作用を詳細に知ることができ、宿主に対する細菌感染のメカニズムが原子レベルで明らかとなる。また、細胞同士の接着を司るのに重要な役割を果たすTJ蛋白質であるCldnファミリーの構造と機能の関係が明らかになることで、細胞間接着装置の分子構築の理解、その機能解析に新たな視点を与え、バリア機能が制御できれば、ドラッグデリバリーの問題に具体的に迫ることができ、将来の応用に対して大きな貢献が期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画では、1)研究試料である組み換えタンパク質の発現と精製、2)タンパク質の結晶化と構造解析が実験手法の中心となる。 1)においては大腸菌培養、タンパク質精製用レジン、タンパク質精製用キット類の使用などで、また新たにオートクレーブを導入予定である。また2)においては結晶化スクリーニングキットなどの使用により一般試薬費が必要であるとした。 すべての実験を通じて、試薬や細菌などのコンタミネーションを避けるため、ピペット類、培養器材などをディスポーザブルのプラスチック製品を使用する。また、2)では結晶化スクリーニングに多数のスクリーニング用プレートを使用し、X線回折実験用ツールなどの消耗品での経費がかかるため多くの予算を計画している。また、国内外旅費、謝金等、また、結晶構造解析に必要な放射光施設利用のための旅費を調査および研究旅費として使用計画を立てている。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Crystal Structure of Clostridium perfringens Enterotoxin Displays Features of {beta}-Pore-forming Toxins.2011
Author(s)
Kitadokoro K, Nishimura K, Kamitani S, Fukui-Miyazaki A, Toshima H, Abe H, Kamata Y, Sugita-Konishi Y, Yamamoto S, Karatani H, Horiguchi Y.
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Journal Title
The Journal of Biological Chemistry
Volume: 286
Pages: 19549-19555
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A histone-like protein of mycobacteria possesses ferritin superfamily protein-like activity and protects against DNA damage by Fenton reaction.2011
Author(s)
Takatsuka M, Osada-Oka M, Satoh EF, Kitadokoro K, Nishiuchi Y, Niki M, Inoue M, Iwai K, Arakawa T, Shimoji Y, Ogura H, Kobayashi K, Rambukkana A, Matsumoto S.
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Journal Title
PLoS One.
Volume: 6
Pages: e20985
DOI
Peer Reviewed
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