2011 Fiscal Year Research-status Report
HIV-gp120の糖鎖と新規高活性抗HIVレクチンとの結合様式の解明
Project/Area Number |
23570147
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
竹中 章郎 いわき明星大学, 薬学部, 教授 (80016146)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 抗HIVレクチン |
Research Abstract |
アクチノヒビン(AH)の標的はHIVの表面から突き出たタンパク質gp120の表面を覆う高マンノース糖(HMTG)である。このHMTGの3本に分岐した糖鎖の先端にあるα(1,2)マンノビオース(Man2)にAHが結合すると考えられている。本研究では、AHが実際にMan2に結合するかどうか、結合するならばどのような様式であるか、その結合の特異性はどこから生じるのか、なぜ種類の異なる他の棟鎖に結合しないのか、さらに3箇所の結合部位が等価であるかどうか、などを調べるために、まずAHとMan2の複合体(AH-Man2)の結晶化条件を最適化した。得られた結晶のX線回折実験を行い、構造解析することによって以下の成果を得ることに成功した。結晶の空間群はP213で、分解能1.6Aのデータを用いて、Rfactor=0.15まで構造を精密化することができた。AHの3個のモジュールにはそれぞれ糖結合ポケットがあり、アポ型のそれと大きな差異がない。3個のポケットそれぞれにはMan2が推定どおりに結合しているという構造的証拠を得た。各ポケットには、マンノース残基間で2個のCH…O水素結合によってコの字型のコンフォメーションをとって安定化したMan2が填り、糖の水酸基をAsp, Tyr, Asn残基が水素結合によって識別し、さらに疎水性相互作用でMan2のコの字型を認識している。このような構造的特徴はα(1,2)結合のMan2だけに特異に結合できる結合様式であることが判明した。以上の研究成果を2件に分けて、スペインのマドリドで開催された22回IUCrコングレスで発表した。これらをまとめた論文を雑誌PNASに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は東日本巨大地震による実験設備および器具等の損壊のために、研究の開始が遅れたが、計画通りAH-Man2複合体の立体構造を決定するという目標を達成することができた。しかし、AH分子の3個のモジュールが偽3回回転対称をもつために、この結晶(P213)では、AH分子が120度ごとに回転して結晶学的3回回転軸の周りで乱れて充填しており、そのためにN末端のアミノ酸残基やペプチド主鎖のループ部分が不鮮明になっている。この乱れの原因を調べた結果、用いたAHのN末端にはシグナルペプチドが結合しており、その長さが不均一であることを見いだした。この不均一が結晶化の再現性を悪くしていると考えられるので、シグナルペプチドがないAHを得るために、AHだけの遺伝子を大腸菌で発現させたが、リコンビナントAHの精製は困難であった。一方、培養期間を変えた野生型AHでは、20日間培養で完全にシグナルペプチドが切除されることを見いだした。この方法で精製したAHの結晶化は再現性が高いことが判明した。この新しいAHのMan2との複合体結晶は前述のP213結晶とは異なっていて、空間群がP22121であり、乱れがないことも分かった。さらにMan3との複合体についても結晶性のものが得られつつある。Man9との複合体も結晶化に着手した。gp120との複合体の結晶化を準備しつつある。このように、精製法の見直しは予想外の進展を与える結果を導いた。以上の研究成果を2件に分けて、スペインのマドリドで開催された22回IUCrコングレスで発表し、AH-Man2複合体の結晶構造(P213)についてまとめた論文を雑誌PNASに投稿することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
達成度で記述したように、AHの分離・精製法を見直したことが今後の進展に大きく影響すると期待できるが、もう一つの問題はAHの溶解度である。今までは抽出過程でトリフルオロ酢酸を使って酸性という過酷な条件下で精製してきたが、今回の溶解度試験でアセトニトリルが有効であることを見いだした。これで処理したAHは結晶化の再現性が向上し、さらにAHの濃度を上げることができることが分かった。これを使って平成24年度の計画が順調に進展するものと期待できる。Man3との複合体の結晶化に比べると、Man9との複合体の結晶化ではAHの溶解度が下がるので、アセトニトリルの効果が期待できる。gp120はタンパク質のほぼ全表面がHMTGで覆われているので、AH-gp120複合体の結晶化においてもアセトニトリルの効果が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画は、交付額にしたがって少し減額したが、申請時に記載した内容とほぼ同じで、予算配分は以下の通りである。設備備品費(0千円)、消耗品費(970千円)、旅費(480千円)、謝金・その他(50千円)。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Structure determination (2) of anti-HIV actinohivin in complex with mannobioses2011
Author(s)
Jiandong Jiang, Md. Mominul Hoque, Kaoru Suzuki, Masaru Tsunoda, Atsushi Takahashi, Takeshi Sekiguchi, Haruo Tanaka, and Akio Takenaka
Organizer
22nd IUCr Congress
Place of Presentation
Madrid, Spain
Year and Date
23-4, August, 2011
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[Presentation] Specificity and efficiency in activity of anti-HIV actinohivin for sugar binding2011
Author(s)
Md. Mominul Hoque, Jiandong Jiang, Kaoru Suzuki, Masaru Tsunoda, Atsushi Takahashi, Takeshi Sekiguchi, Haruo Tanaka, and Akio Takénaka
Organizer
22nd IUCr Congress
Place of Presentation
Madrid, Spain
Year and Date
23-4, August, 2011