2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570155
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
秋山 正志 独立行政法人国立循環器病研究センター, 分子病態部, 室長 (30298179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小亀 浩市 独立行政法人国立循環器病研究センター, 分子病態部, 室長 (40270730)
武田 壮一 独立行政法人国立循環器病研究センター, 心臓生理機能部, 室長 (80332279)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ADAMTS13 / プロテインS |
Research Abstract |
我々は、交付申請書の計画にしたがい、ADAMTS13と中和抗体、ならびにプロテインSとC4BPBとの複合体の結晶構造を決定し、血栓症の発症メカニズムの分子基盤を明らかにするために、当該年度においてタンパク質発現系の構築を行った。まずADAMTS13のMDTCSドメイン、ならびにプロテインSのC末側SHBGドメインの発現系を構築した。ADAMTS13のMDTCSドメインはこれまで大量培養した血清培地からの精製方法が確立していなかったが、NaCl濃度を上げ、Caを加えることで凝集を防ぎ、その後の精製ステップに進むことができるようになった。プロテインSはSHBGドメインのN末側に隣接するEGF様ドメインを含むものとふくまない二種の発現コンストラクトを作成し、定常発現細胞を分離し精製を行っている。これらはいずれも分泌タンパク質であり多数のジスルフィド結合を含み、発現料も少なく、大量の培地を必要とするため、培地を集めて精製を行い、平成24年度から結晶化スクリーニングを行う予定である。 ADAMTS13中和抗体は、パパイン処理後Fab断片を精製した。C4BPBについても、大腸菌の発現系を用いて、リフォールディングによる再生を目指したが、回収効率が非常に悪いため、動物細胞での発現に切り替えたが、C4BPB単独での発現効率は動物細胞では非常に低かったために、プロテインSとの共発現を行う。そのために、高効率の一過性発現系の構築を現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、現在までにADAMTS13のMDTCSドメイン、プロテインSのC末側SHBGドメインの発現・精製が可能となった。また中和抗体のFab断片も精製を行い、結晶化スクリーニングを行うことが可能な状態である。一方、C4BPBの発現については現在難航しているが、293S細胞を用いて一過性発現させるベクターを用いて、プロテインSと共経発現させ、複合体を形成した状態で精製を行う系を立ち上げているところである。個別に見ると、予備的なスクリーニングにおいては、ADAMTS13のMドメインを欠くDTCSと中和抗体の結晶を得ることができたが、結晶の品質が悪く、構造決定可能なX線回折データを得るまでには至っていない。したがって、精製したMDTCSとの共結晶化をスクリーニングする予定である。プロテインSについても予備的にEGFドメインを複数含む断片単体での結晶化スクリーニングを現在行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在並行してADAMTS13とプロテインS複合体タンパク質の精製を進めている。ADAMTS13とプロテインSについては、動物細胞を用いた発現によって大量精製を進める。C4BPBの発現に手間取った場合、プロテインSのSHBGドメインは単独のドメイン構造自体報告されていないため、単独での結晶構造決定を試みる。C4BPBも単独の結晶構造は未報告であり、発現が成功した後に、単独での結晶化スクリーニングを進める予定である。また、プロテインSのSHBGドメインはTAM受容体(TAM、AXL、MER)の細胞外ドメインとも相互作用することが示唆されており、生化学的な実験によりC4BPBとの相互作用との関係性を調べる予定である。ADAMTS13はマルチドメインタンパク質であり、すでにDTCSのドメイン構造を我々は報告している。MDCTSと中和抗体との複合体の結晶を得られない場合には、中和抗体と結合するSドメインのみの発現を試みる。Sドメインはそのままでは非常に発現効率が悪いが、構造をもとにコンストラクトを作成・発現・精製し、中和抗体との複合体の結晶化を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大腸菌と異なり安定発現動物細胞分泌系でのタンパク質発現は、発現量が少ないために大量の培地を必要とする。したがって、大量の培養試薬(培地・血清)や培養プレート、ローラーボトルを購入する予定である。精製には、Ni-NTAアガロースと精製に用いるバッファー、イオン交換カラムが、結晶化スクリーニングには、スクリーニングキットやプレート、チップが新たに必要であるため、購入する予定である。また、いくつかの実験においては、タグを切り離すためのプロテアーゼを購入する予定である。さらに、研究が順調に進展した場合には、構造解析に用いるX線回折データを収集するために、SPrinig-8において実験を行うことを想定している。また、研究成果の発表ならびに最新の研究成果を収集するために、国内学会に参加するための旅費を申請した。
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