2012 Fiscal Year Research-status Report
立体構造に基づくADAMプロテアーゼによるシェディング機構の解明
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23570156
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
武田 壮一 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80332279)
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Keywords | プロテアーゼ / エクトドメインシェディング / 構造生物学 / X線結晶構造解析 / ADAM / 蛇毒 / トロンビン産生 / タンパク質間相互作用 |
Research Abstract |
ADAMファミリープロテアーゼは発生・分化、形態形成、あるいは癌やアルツハイマー病など様々な病態に関わる主に膜結合のプロテアーゼであり、HB-EGFなどEGFファミリー増殖因子前駆体、カドヘリンなどの接着分子、APPなどを切断遊離(エクトドメインシェディング)する。膜型ADAMは様々な基質をシェディングする一方、それらの基質タンパク質の切断配列にコンセンサスが無く、どのように基質認識を行うか不明である。これまでの研究で触媒部位とは別に存在するエキソサイトが基質認識に重要であるという知見が得られているが、本研究では基質が明確である蛇毒ADAMに着目してさらに研究を進める。前年度に引き続き、Echis multisquamatus由来のプロトロンビン活性化酵素Multactivaseの構造解析を進めた。以前よりMultacivase全体分子で3.3Åのデータを得ていたが、さまざまな取り組みにかかわらず位相決定に至らなかった。そこで本年度はMドメイン欠損フラグメント、重鎖のみ、軽鎖のみ、基質であるプロトロンビン断片との複合体、それぞれの分子から結晶を調整し、これらを用いた構造解析の可能性を模索した。これら部分フラグメントの結晶においてもなかなか高分解能の回折をしめす結晶が得られず、構造解析が難航している。最近になり、ようやくMドメイン欠損フラグメントより2.5Å分解能データの取得に成功し、その構造解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蛇毒ADAMの一つMultactivaseについて、さまざまな結晶を得ることに成功したが、未だ一つも構造決定に至っておらず、目的の達成度としてはやや遅れてしまっている。高分解能データが得られる良質な結晶を得ることができないのがボトルネックとなっているが、これはリコンビナントではなく蛇毒由来の試料を用いる限界かもしれない。蛇毒から得た試料から様々な結晶が得られることからなかなか大量発現系の構築に踏み切る決断が出来なかったが、分子改変の必要性からやはり早期に大量発現系構築の可能性を模索する必要があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
Mドメイン欠損フラグメントより得た2.5Å分解能の回折データの解析を進め、これより得られる部分構造と、機知の他のADAMのMドメインの結晶構造を元にMultactivaseの分子全体構造の解明を進める。一方で、蛇毒由来タンパク質を結晶化試料として用いることの限界も見えてきている。ADAMの機能をより深く理解するための構造生物学研究にはリコンビナントタンパク質の利用が必須であり、本年度はMultactivaseの構造解析と並行して昆虫細胞を用いた膜型ADAMのエクトドメインの発現も進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は様々な試みにも拘らず良質の結晶が得られなかった。このため、昨年度までに購入した消耗品等でほとんどの実験が行われたこと、SPring8での放射光データ測定を行わなかったことなどで予定していた旅費や物品費に残額が生じた。これまで蛇毒より精製したタンパク質標品を用いて結晶化を行っていたが、今年度の研究の研究の過程でリコンビナント無しに研究の進展が難しい状況であることが判明した。このため、次年度では昆虫培養細胞によるリコンビナントADAMタンパク質の大量発現を試みる。このために新規に培養細胞観察用の倒立位相差顕微鏡等の備品や遺伝子実験試薬、培養試薬の購入を行う。
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