2011 Fiscal Year Research-status Report
葉緑体型ATP合成酵素の活性調節機構を構造の側面から理解する
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23570159
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
紺野 宏記 金沢大学, バイオAFM先端研究センター, 准教授 (80419267)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ATP合成酵素 / 葉緑体 |
Research Abstract |
ATP合成酵素の部分複合体である葉緑体型α3β3γでは挿入配列により内在性の阻害サブユニットであるεによる活性制御(ε阻害)が非常に強く発現される。挿入配列とε阻害の関係を明らかにするために、εサブユニットにより阻害された構造をとっているα3β3γ の構造解析を目指した。初年度(23年度)は、構造解析に必要な変異体の作成およびその精製法の確立を行った。これまでATP合成酵素の研究では、α3β3γεは精製を容易にするためヒスチジンタグを導入してきたが、付加したタグがタンパク質の結晶化に影響を与える可能性が高い。そこで、精製後にヒスチジンタグを取り除くためのトロンビン切断サイトをタグとタンパク質の間に導入したα3β3γεを用意した。十分なタンパク質試料を調製した後に、結晶化ロボット・結晶化キットを用いて初期スクリーニングを実施し結晶化条件を探ったが、良好な結晶化条件は見つからなかった。トロンビンによるタグの除去が不完全な場合、α3β3γε分子が不均一な集団となり、これが結晶化に影響する可能性が考えられた。そこで、タグを利用しないα3β3γεの精製法を確立し、再度、初期スクリーニングを実施したところ、結晶化タンパク質を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の申請時に掲げた平成23年度の研究計画は、タンパク質の変異体の作成、結晶化条件の探索であったが、変異体の作成およびその精製条件を確立することができた。また、タンパク質の結晶化は、さまざまな結晶化条件を、試行錯誤しながら行うのが一般的であるため、当初の計画以上に早く進む場合もあるが、大幅に遅れる場合も多い。研究着手1年目にしてある程度の大きさの結晶ができる条件を見つけ出したことは、十分に計画通りに研究が進んでいるといってよいと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は、α3β3γεの結晶化条件を見出したが、結晶の大きさがまだ十分ではないため、今後は結晶化条件の精密化を行いX線構造解析を行う。また、挿入配列の有無による複合体分子の構造の違いを比較することで、εサブユニットによる阻害状態を構造面から理解する。そのため、挿入配列を欠損した変異α3β3γεを調製し、平成23年度に行ったα3β3γεの結晶化と同様に、結晶化ロボット・結晶化キットを用い初期スクリーニングを実施し、結晶化条件を探り構造解析を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主にα3β3γεおよび挿入配列を欠損した変異α3β3γεの精製に必要な生化学実験試薬、器具、結晶化スクリーニングキット、結晶化用プレートに使用する予定である。また、精製の効率を上げるために、高速遠心機用ロータも購入する予定である。
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