2012 Fiscal Year Research-status Report
免疫応答の成熟に伴う抗体の構造・機能変化とそのメカニズムの解析
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23570169
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
清水 健之 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (10339137)
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Keywords | 免疫学 / 抗体 / 免疫応答成熟 / 抗原親和性 / 免疫記憶 / 体細胞突然変異 |
Research Abstract |
本研究では、二次免疫応答時に産生される後期抗体のうち、これまで研究が進んでいないIgM型後期抗体に注目し、免疫応答の成熟に伴う抗体の構造上の特徴や機能の変化、後期抗体の産生メカニズムを解明することを目的とする。これまでに行われている抗体レパートリーの研究は主にメモリーB細胞やハイブリドーマのレパートリーを解析しているが、本研究では実際に生体内で抗体を産生している形質細胞を分離して解析していることが特徴である。 以下に24年度の研究成果を要約する。 C57BL/6マウスをハプテンのNPを結合したトリガンマグロブリンを免疫したマウスの脾細胞から、形質細胞を磁気標識によって分離した。B6マウスの抗NP抗体はVH186.2重鎖とlambda軽鎖を用いているものが多い。そこで、得られた形質細胞を抗IgM抗体と抗lambda抗体を用いて細胞内染色し、lambda陽性細胞でかつIgM陽性細胞(IgM産生形質細胞)とIgM陰性細胞(クラススイッチした形質細胞)をセルソーターで分離した。ここからVH186.2遺伝子をPCRで増幅し、クローニングして塩基配列を解析した。その結果、二次免疫反応におけるIgM陽性形質細胞には、非常に低い親和性を示すと思われる配列と、クラススイッチした形質細胞と同様の高親和性と思われる配列が得られた。二次免疫直後には低親和性のものが多いこともわかった。 得られた配列をIgM発現ベクターにクローニングして、lambda軽鎖を発現しているJ558L細胞株に導入することで、組換えIgMを作製した。その抗原親和性をELISA法によって解析した結果、二次免疫反応で産生される後期抗体レパートリーには実際に抗原親和性が低いものが多いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は磁気標識法による抗体産生細胞の分離とその抗体遺伝子解析に集中し、重要なデータを得られた。また、遺伝子解析と並行して組換え抗NP IgMの発現ベクターの作製とIgM産生を行い、抗体精製を省略してELISA法により親和性解析を行うことで実験の迅速化を達成した。ほぼ予定通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1、後期抗体の機能解析:抗体としての機能を解析するために、補体系古典経路の活性化を測定する。ヒツジ赤血球をNP化し、作製した組換えIgM抗体を結合させる。ウサギ補体成分を添加し溶血反応を起こさせることで、IgM抗体の補体経路活性化能を測定する。また、補体成分の沈着をELISA法で検出する。これらの実験により、低親和性IgM型後期抗体の機能を高親和性IgM抗体と比較検討する。 2、後期抗体産生細胞とB細胞サブセットの関連:IgM型メモリーB細胞の解析の結果から、IgGとは異なりIgM型メモリーB細胞には低親和性のBCRを発現するものが多くいることがわかった。これらが本研究で明らかにしたIgM型後期抗体の元になっていると考えている。しかし、ナイーブB細胞やmarginal zone B細胞、B-1細胞の関与については明らかでない。セルソーターによってこれらの細胞を分離し、抗体遺伝子の構造的特徴を、後期抗体の特徴と比較して類似点があるのかを検索する。これにより、後期抗体を産生している細胞がどのような経路で分化しているのかを検討する。 3、後期抗体型BCRの機能解析:24年度に得られた結果から、低親和性IgM型BCRを発現しているメモリーB細胞が二次免疫反応で抗体産生細胞へ分化していると考えられる。分泌型抗体だけでなく、低親和性のBCRも機能的に十分高いことが示唆された。そこで、これまでの成果で得られた様々な抗原親和性を持つIgMを、膜結合型のIgM定常領域遺伝子と組み合わせて発現ベクターに組み込み、B細胞抗原受容体として細胞に発現させる。抗原を認識したときのシグナルや、T細胞への抗原提示能を調べ、後期抗体型BCRの機能を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
後期抗体の親和性解析は、ELISA法で充分な結果を得られたため表面プラズモン測定は行わなかった。その他試薬や抗体等で当初の予定よりも経費が少なくすんだものがあり、残金が生じた。25年度に低親和性IgM型BCRの機能解析を新たに計画し、その経費に充てるものとする。それ以外は当初の計画通りに研究を進める予定である。
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[Journal Article] In vivo role of aldehyde reductase2012
Author(s)
Motoko Takahashi, Satoshi Miyata, Junichi Fujii, Yoko Inai, Shigemitsu Ueyama, Motoko Araki, Tomoyoshi Soga, Reiko Fujinawa, Chiaki Nishitani, Shigeru Ariki, Takeyuki Shimizu, Tomomi Abe, Yoshito Ihara, Morimitsu Nishikimi, Yasunori Kozutsumi, Naoyuki Taniguchi, and Yoshio Kuroki
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Journal Title
Biochim. Biophys. Acta.
Volume: 1820
Pages: 1787-1796
DOI
Peer Reviewed
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