2011 Fiscal Year Research-status Report
高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸の生理的・病理学的機能の解明
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23570175
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
羽渕 脩躬 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 客員教授 (90024067)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / デルマタン硫酸 / デコリン / GlaNAc4S-6ST / 肝繊維化 / 神経細胞突起形成 |
Research Abstract |
肝繊維化に及ぼす高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸の役割を解明するため、野生マウス及び高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸欠損マウス(GalNAc4S-6ST KOマウス)に四塩化炭素/ミネラルオイル混合溶液(四塩化炭素として2ml/kg)を週2回、全体で9回腹腔注射し、肝臓に繊維化を引き起こした。最後の四塩化炭素投与後通常飼育を9週間継続し回復過程を観察した。これらのマウス肝臓について、コラーゲン量変化、GAGの含量と組成、COL1a1, aSMA, TGFb1, TIMP-1, TIMP-2, MMP2, MMP9, mMCP6、GalNAc4S-6STのmRNA発現、血清中のALT, AST活性などを調べ、 Sirius redによるコラーゲン繊維の沈着、Decorin抗体による染色を行った。その結果繊維化に伴い野生型とGalNAc4S-6ST KOマウスの両方でコラーゲン量の増加、COL1a1, TIMP-1, TIMP-2, MMP2, MMP9のmRNA発現増加、血清中のAP, ALTの増加、組織へのコラーゲンの沈着とDecorinの増加を観察した。これらの変化は野生型とGalNAc4S-6ST KOマウスの間で顕著な違いは観察されなかった。回復過程の観察はまだ予備的段階であり次年度の実験で詳しく調べる。神経細胞の機能に及ぼす高硫酸化コンドロイチン硫酸の影響をみるため、培養したマウスDRG神経細胞の突起形成に及ぼす合成多価CSEと脳プロテオグリカンの影響を調べ実験により、合成多価CSE が高い阻害効果を示すだけでなく、GalNAc4S-6ST KOマウスの脳プロテオグリカンは野生型マウスの脳プロテオグリカンよりも有意に突起形成阻害効果が小さいことが示され、神経突起形成に高硫酸化コンドロイチン硫酸が働いていることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
四塩化炭素投与による肝繊維化の過程における高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸の役割を野生型マウスと高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸欠損マウスで比較した結果、肝繊維化の過程には高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸は大きな影響を持たないことがわかった。このことからコラーゲン繊維形成段階では高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ははっきりした役割を持たないと考えられる。神経細胞の突起形成に高硫酸化コンドロイチン硫酸が阻害的に働くという観察は市販のイカ軟骨コンドロイチン硫酸Eを用いた実験で示されていたが、コンドロイチン硫酸Eを全く持たないGalNAc4S-6ST KOマウスの脳プロテオグリカンの阻害効果を調べたのは私たちの研究が初めてである。この研究によりGalNAc4S-6ST KOマウスが神経細胞の分化、ネットワーク形成の研究に優れた実験系を提供することが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
肝繊維化に伴いDecorinの組織沈着量が変動することは私たちの観察だけでなく、他の研究者によっても報告されている。肝臓Decorinには高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸が糖鎖として付加していることを私たちは以前に報告したので、高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸が肝繊維化のある段階で影響を持つことが考えられる。今後の研究では、肝繊維化の回復過程で高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸が何らかの役割を持つ可能性を重点的に調べる。回復過程にはコラーゲン繊維の分解吸収過程やアポトーシスが関係する。これらの過程に関与する酵素やサイトカインの動態を調べる。高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸はこれらの酵素やサイトカインと結合してその機能を発揮していると考えられるので、肝臓から抽出精製した高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸プロテオグリカンによる機能制御を調べる。高硫酸化コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸の組織局在を調べるためCS-E特異的抗体による組織染色条件を調べる。神経細胞の機能に及ぼすCS-Eの役割を調べるため、国内国外の研究者との共同研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
肝臓の繊維化に伴い変化するタンパク質、酵素、サイトカインの動態を調べるため種々の抗体、サイトカイン、酵素類、mRNA発現キットが必要となる。CS-E特異的抗体を精製するため培養試薬および抗体精製カラム類が必要である。組織化学的実験に必要な消耗品、抗体、キットが必要である。国内学会出張旅費が必要。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] A sulfated carbohydrate epitope inhibits axon regeneration after injury2012
Author(s)
Brown JM, Xia J, Zhuang B, Cho KS, Rogers CJ, Gama CI, Rawat M, Tully SE, Uetani N, Mason DE, Tremblay ML, Peters EC, Habuchi O, Chen DF, Hsieh-Wilson LC
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A.
Volume: 109
Pages: 4768-4773
DOI
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