2012 Fiscal Year Research-status Report
複製停止を感知する複合体による停止フォーク安定化機構の解明
Project/Area Number |
23570183
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
田中 卓 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主席研究員 (80425686)
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Keywords | 複製フォーク / フォーク安定化因子 / 複製再開始 / DNA結合 / PriA |
Research Abstract |
細胞内で停止したDNA複製フォークは、フォーク安定化因子により保護・安定化される。真核細胞では、分裂酵母のMrc1とSwi1-Swi3複合体が、フォーク安定化因子として知られ、我々は、これまでにこれらの因子が合成停止フォーク構造を特異的に認識することを報告した。この、フォーク安定化因子による停止フォークの認識は、フォーク安定化機構の最初期で極めて重要な機能であるが、これらの因子が細胞内で実際に停止フォークに結合していることを示す証拠は報告されていない。フォーク安定化の分子機構解明のためには、停止フォークの安定化因子による特異的認識様式を明らかにすることが必須となる。大腸菌におけるフォーク安定化因子であるPriAタンパク質を、細胞内におけるフォークの停止を示すインジケーターとして利用し、染色体免疫沈降法(ChIP)と組み合わせたマイクロアレイ(chip)解析(ChIP-on-chip)と、免疫染色による直接観察を重ねて行い、チミン枯渇処理をした細胞において、ChIP-on-chipで複製起点近傍にピークのクラスターを、免疫染色によって核様体内に特異的スポットを検出、枯渇から解放すると、これが拡散することを見出した。また、複製起点非依存的に開始される特殊な複製開始経路においては、複製終結点付近において新たに複製が開始されている可能性を示唆する結果を得た。実際にこの領域を欠く変異体は、複製起点非依存的には生存できないため、この複製様式に於いては複製起点ではなく、複製開始のための新たな領域が必要とされることを示している。以上の結果は、複製停止から停止フォーク安定化を経て複製再開始に至る機構に新たな洞察を与えるのみならず、原核細胞から真核細胞へ、複製機構がどのように進化してきたかに関わる重要な知見を示しており、複製回復機構に関わる分子機構の全体像解明に寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進行中の複製フォークは様々な原因で停止し、再開始反応により回復するが、生細胞内における、停止フォークの安定化および複製再開始の分子機構の詳細は明らかにされていない。これを解明するためには、フォーク安定化因子と複製複合体との相互作用の解明、および停止フォークを検出する技術の確立を達成する必要がある。大腸菌においては、PriAタンパク質が停止フォーク構造を特異的に認識・結合するが、細胞内でこれを直接示した報告はない。今回、PriAタンパク質が生細胞内の停止フォークに結合していることを直接示し、その解析から、複製再開始に必須の新たなゲノム領域を、複製基点以外に見出したことは、複製再開始反応の分子機構の確立に寄与する重要な知見であると考えている。真核細胞における複製再開始に関わる因子群の相互作用については、現在伸展がなく、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸菌においては、あたらに見出された複製再開に必須の領域を欠く変異体や、再開始点として機能するDNA構造の解析を行い、フォーク安定化から複製再開始に至る分子機構のモデルを確立し、真核生物における同機構解明に応用する。各種細胞からの複製複合体構成因子の精製方法については、本研究室で既にある程度確立されているので、詳細な条件を決定し精製、生化学的解析に使用する。また、in vitro免疫沈降法については、塩、核酸等パラメータを検討し、特異的相互作用を検出できる条件を探る。加えて、新たな相互作用因子を同定し、機能解析するために、フォーク安定化因子の特異的抗体を使用した免疫沈降法により、細胞抽出液からの結合タンパク質の分離同定を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子間相互作用の検討において、標識化DNAを使用するため、放射性同位体標識核酸試薬を積算した。また、タンパク質精製のために必要なカラム類を計上した。さらに、フォーク停止を起こしやすい領域の網羅的検出は、マイクロアレイによるしか方法がないので、このchip購入費用を計上する。国内旅費は国内の学会にて研究報告をするための費用として、妥当な額を計上した。
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