2012 Fiscal Year Research-status Report
鞭毛・繊毛運動機構におけるチューブリン・ポリグルタミル化の機能
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23570189
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
神谷 律 学習院大学, 理学部, 教授 (10124314)
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Keywords | 細胞運動 / 翻訳後修飾 / ダイニン / チューブリン |
Research Abstract |
ポリグルタミル化は多くの真核生物で見られるチューブリンの翻訳後修飾の一種で、微小管と結合タンパク質の相互作用を調節する機能を持つ。キネシンやダイニンの運動性にも大きな影響を与えると考えられているが、具体的にどのような効果があるかはわかっていない。本研究では、鞭毛軸糸微小管のグルタミル化修飾を欠損したクラミドモナスの変異株tpg1 を使って、ポリグルタミル酸化修飾と鞭毛の運動性との間の定量的関係を求め、この修飾の鞭毛・繊毛運動調節の機構と、細胞一般における生理的意義を明らかにすることを目的にしている。平成24年度には、さまざまなダイニン内腕欠失突然変異株とtpg1の2重変異株を作製し、ポリグルタミル酸化修飾の欠陥が各種ダイニンの機能に及ぼす影響を詳細に検討した。その結果、この修飾はダイニン分子種e と呼ばれる特定のダイニンの運動機能に特に重要であることが明らかになった。このダイニンは周辺微小管同士を架橋する構造であるネキシンリンク(別名ダイニン調節複合体:DRC)と相互作用していることが知られている。そのことを考慮して、さらに4種のDRC欠損変異株との2重変異株の運動性を検討したところ、チューブリンポリグルタミル酸化はDRCの機能にも大きな影響を与える可能性が示唆された。このように、このクラミドモナス変異株の結果は、鞭毛の運動性を特異的に調節するチューブリン修飾の存在を強く示唆するものであるが、そのような例はこれまでのポリグルタミル酸化修飾の研究では観察されておらず、きわめて斬新な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験計画のうち、ポリグルタミン酸化修飾をうけたチューブリンをin vitroで重合させて運動解析する実験は中止し、多くの突然変異株を用いた生物学的解析に重点を置くことにした。in vitro運動系の実験を中止したのは、鞭毛由来のチューブリンを重合させるのが予想以外に困難であることが判明したことと、海外研究者からポリグルタミル酸化異常チューブリンを重合を試みて失敗したという報告を受けたからである。一方、突然変異株を用いた結果からは、チューブリンポリグルタミル化がダイニン調節複合体(DRC)に深く関与していることを示す結果が得られている。もともと25年度に行う予定の研究ですでに一定の成果が出ていることは、十分順調な展開であると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
最近,tpg1 変異株がコードしているポリグルタミル酸化酵素TTLL9と相互作用する新規タンパク質と、そのタンパク質を欠損した突然変異株を単離することに成功した。これら二つのタンパク質の相互作用を詳しく解析することにより、チューブリンポリグルタミル酸化の調節機構や酵素の運搬機構が明らかになり、鞭毛運動調節機構への洞察が深まることが期待できる。ポリグルタミル酸化酵素と直接相互作用するタンパク質の存在はほとんど知られていないので、この研究は重要な価値を持つ可能性がある。当初の予定にはなかったことであるが、この新規タンパク質に重点をおいて研究を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
チューブリンポリグルタミル酸化酵素TTLL9と新規結合タンパク質の相互作用をin vitroで調べるため、組み換えタンパク質を作製する。そのための費用として、試薬、ガラス器などに予算を計上した。また国内外の学会に参加するための旅費にも50万円程度の使用を予定している。
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Research Products
(4 results)