2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570193
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
浜田 大三 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命助教 (60372132)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 天然変性蛋白質 / フォールディング / 分子認識 / 蛍光偏光解消 / X線小角散乱 / 円偏光二色性 / モルテン・グロビュール / 中間状態 |
Research Abstract |
本研究の目的は、天然変性蛋白質の作用機構を生物物理学的な観点により、明らかにするために、腸管出血性大腸菌の天然変性型エフェクターであるEspBの分子認識機構をタンパク質のフォールディング現象ととらえ、その熱力学的機構を解明することである。 本年度は、EspBによる、αカテニン認識部位の同定とその結合に関する熱力学的解析を実施した。まずEspBの部分配列に相当するペプチド断片を合成し、それぞれの溶液中での立体構造を円偏光二色性スペクトルにより、観察した。その結果、アミノ酸配列上、31番目から70番目に位置するペプチド領域が高い、二次構造形成能を示すことが明らかになった。この結果は、変性領域予測ブログラムの結果とおおむね一致していた。さらに、蛍光偏光解消法を用いることで、二次構造形成を確認した領域に相当するペプチド断片が宿主のαカテニンに特異的に結合することを明らかにした。本ペプチド領域に対して、さらにヘリカルホエールプロットを行った結果、もし、この領域全長がαヘリックス構造を形成したとした場合、両親倍性のヘリックスを形成することが示唆された。興味深いことに、円偏光二色性スペクトルを用いた熱変性解析の結果から、EspBに存在する二次構造は、通常の球状蛋白質のそれと異なり、側鎖間の相互作用が欠落した、中間状態的な構造を持つことが示唆された。 現時点で、本研究は、予定通り進行しており、次年度における複合体立体構造の解析のための基本的な準備は整った。一方、分子間相互作用の熱力学的解析については、非特異的な吸着などのサンプルの性質上、QCMやITCの使用が困難であることが、実験開始の初期段階で明らかになったが、別の測定法として、蛍光偏光解消法により、これを克服できたことは、特筆すべき成果と考えて良い。なお、上記の研究成果については,現在、論文作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、当初の目的を達成しており、本研究はおおむね順調に進展していると判断している。また、研究手法の方針転換もあったが、方法論こそ異なるが、目的を達成することができたことは、特筆すべき点であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、αカテニンーEspBの複合体の構造解析と同時に複合体形成に関する速度論的解析から、複合体形成におけるフォールディング機構の解明を進める。なお、本研究では、X線結晶構造解析だけでなく、X線小角散乱実験を行うことで、静的でかつ、詳細な構造情報と、動的で従来の手法ではとらえにくい、分子認識/フォールディングの中間状態、遷移状態の構造特性について、解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、当初の計画通り、主に物品費と構造解析のための施設使用料、旅費、並びに、論文発表のための諸費用に用いる。
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Research Products
(5 results)