2011 Fiscal Year Research-status Report
構造生物学的手法によるセルピン病治療薬開発のための新しい戦略
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23570195
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
恩田 真紀 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60311916)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 生物物理 / 蛋白質 / 痴呆 / フォールディング / 神経変性 / コンフォメーション病 |
Research Abstract |
本研究の目的は、セルピン蛋白質がポリマー化して起こるセルピン病の新しい治療薬開発戦略を、どこよりも早く提案することである。モデル蛋白質には、変異体が認知症を引き起こすことで知られているニューロセルピンを使用した。 【Refolding中間体の構造解析】セルピンのポリマーはFolding中間体から形成されることから、治療薬開発のターゲットとなる分子(ポリマー前駆体)はセルピン蛋白質のFolding中間体である。そこで、代表研究者が開発したペプチドマッピング法によりニューロセルピンのRefolding中間体の構造解析を行った。その結果、これまで知られていなかった揺らぎの領域を明らかにし、新奇のポリマー前駆体の構造を提案した。本成果は、アメリカのノースカロライナ州で開催された国際学会で発表した。 【ポリマー伸長機構の解析】ポリマーの伸長反応を抑止する方法を見出すためには、その伸長機構を明らかにすることが重要である。そこで、Refolding中間体を開始物質とし、これからポリマーが伸長していく過程を、チオフラビンT、ProteoStat等の蛍光色素を利用して解析を行った。その結果、少なくとも2種類の伸長反応があることが分かった。 【Latent型ニューロセルピンの結晶化】ポリマーの連結部の相互作用を解析するため、ポリマーの連結部分と構造と酷似た構造を有する熱安定型立体構造異性体のLatent型の結晶化を試みた。その結果、初期スクリーニングは完了し、現在結晶化条件の絞り込みを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【Refolding中間体の構造解析】当初の目標であった、Refolding中間体の構造解析に成功し、国際学会で発表した。現在成果をまとめた論文を投稿中で、本項目については概ね目標を達成できた。 【ポリマー伸長機構の解析】二種類の蛍光プローブを利用することで、ポリマーの伸長機構の解析に成功し、目標を達成できた。 【Latent型ニューロセルピンの結晶化】X線構造解析が十分可能なレベルの結晶は残念ながら得られなかったが、初期スクリーニングを完了できたので、次年度には高品質の結晶が得られるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Refolding中間体(ポリマー前駆体)の構造解析には成功したので、24年度はこの中間体に特異的に結合する低分子化合物(治療薬開発のシーズ)の探索を行う。具体的には、得られた中間体の構造を元に抑止効果が期待できる低分子化合物を絞り込み、候補の低分子を添加した場合のポリマー化速度を調べる。代表研究者は、リアルタイムPCRを使用して96サンプルのポリマー化速度を同時に測定できるシステムを既に開発済で、これを利用してポリマー化速度の測定を実施する。 (2) ポリマーの伸長機構については少なくとも2種類あることが明らかとなったので、24年度はそれぞれについてより一層詳細に解析し、いずれの伸長反応が発病により深く関わるか調べる。 (3)Latent型ニューロセルピンの結晶構造解析を実現する。初期スクリーニングの結果を元に凝集抑制剤等の添加物の工夫を行って、より良い質の結晶を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【物品費:計1,201,294円】23年度繰り越し分の213,294円は、前年度実施できなかったLatent型ニューロセルピンのX線構造解析が十分可能なレベルの結晶化実験の実施に充てる(結晶化プレート、蛋白質の精製に必要な試薬類など)。988,000については、蛍光プローブ、実験に必要なプラスチック消耗品、ガラス器具、蛋白質の調製に必要な器具(HPLCカラムや蛋白質濃縮器)や試薬に充てる。500,000円以上の物品を購入する予定はない。【旅費:計162,000円】日本生化学会近畿支部例会(京都:1日間)、日本蛋白質科学会(名古屋:3日間)、日本生化学会大会(福岡:3日間)および日本農芸化学会(仙台:4日間)での成果発表を計画しており、その旅費として142,000円使用する予定である。また、研究協力者である京都大学・三上文三教授との打ち合わせのための旅費として(京都:10日間)概算20,000円使用する予定である。【人件費・謝金:0円】【その他:計50,000円】論文の投稿・出版費用として使用する予定である。
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Research Products
(11 results)