2012 Fiscal Year Research-status Report
構造生物学的手法によるセルピン病治療薬開発のための新しい戦略
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23570195
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
恩田 真紀 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60311916)
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Keywords | Protein Folding / Conformational Diseases / Serpin / dementia |
Research Abstract |
本研究の目的は、セルピン蛋白質がポリマー化して起こるセルピン病の新しい治療薬開発戦略を提案することである。モデル蛋白質には、変異体が認知症を引き起こすことで知られているニューロセルピンと、これまでポリマー化が起こらないと考えられてきたオボアルブンを使用した。 【Latent型ニューロセルピンのX線結晶構造解析】セルピンのポリマーは非常に不安定で、結晶化が極めて困難である。そこで、ポリマーの連結部と酷似した構造(ループ挿入型β-sheet A)を持つLatent型(熱安なモノマー)の結晶構造解析を行うことでポリマーの連結部分の相互作用の解析を目指してきた。今年度、野生型についてはLatent型の結晶構造をいくつか得ることに成功したが(分解能2.2~3.5Å)、病原性変異体については結晶を得ることが出来なかった。そこで、Latent型より更に熱安定で、かつ同様のループ挿入型β-sheet A構造を持つCleaved型の結晶化を試みた。その結果、Ser49Pro型病原性変異体において、2.0Å分解能でのX線結晶構造解析に成功した。 【物理化学的解析1】上記で得た結晶構造を基に、ポリマー連結部分の相互作用について調べた。その結果、病原性変異体のβ-sheet A構造は、野生型のそれに比べ水素結合の数が少なく不安定であることが示唆された。そこで、病原性変異体のβ-sheet A構造は野生型よりも容易に開閉し、分子内部の疎水性コアを露出しやすいのではないかと考え、疎水性クラスターに特異的に結合する蛍光プローブでこれを確認した。その結果、変異体の蛍光プローブに対する結合定数は、野生型の3000倍以上であることを明らかにした。 【物理化学的解析2】セルピンのポリマー化が起こる原因を特定するため、これまでポリマー化が起こらないと考えられてきたオボアルブンのポリマー化を試み、これに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【Latent型ニューロセルピンのX線結晶構造解析】病原性変異体のLatent型の結晶化に成功できなかった。代替策として、Cleaved型のX線結晶構造解析には成功したが、学術論文で発表するためには更なるサポートデータが必要である。 【物理化学的解析】解明した結晶構造を基に、野生型よりも病原性変異体により結合しやすい物質を見出すヒントが得られた事は大きな前進であった。しかし、当初予定していた「ポリマーの形成や伸長を抑止する手段を提案する」段階には進めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)病原性変異体のβ-sheet A領域に結合し、野生型のそれには結合が困難な低分子化合物のデザインに着手する。また、23年度に得たRefolding中間体(ポリマー前駆体)の構造解析結果も含めて、(i)[中間体]→[ポリマー]を抑制する、(ii)[中間体]→[Native型]を助ける、(iii) ポリマーの伸長を抑制する-の三通りの戦略で、それぞれに有効な薬剤を探索し、薬物設計の戦略を提案する。 (2)病原性変異体についてはLatent型ではなくCleaved型の構造データを今後使用していくため、Cleaved型で議論するためのサポートデータを蓄積する。 (3)当該分野で最も有力な専門学会「The Serpins」で研究成果を発表し、医療機関・企 業への情報提供や共同研究の立案を積極的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【物品費】計913,658円:24年度繰り越し分の213,658円は、Latent型に代りCleaved型で議論するためのサポートデータを蓄積するための実験に使用する。700,000円については、蛍光プローブ、実験に必要なプラスチック消耗品、ガラス器具、蛋白質の調製に必要な器具(HPLCカラムや蛋白質濃縮器)や試薬に充てる。500,000円以上の物品を購入する予定はない。 【旅費】計450,000円:日本蛋白質科学会(鳥取:3日間)、日本生化学会大会(横浜:3日間)およびThe Serpins(オーストリア:8日間)での成果発表を計画しており、その旅費として430,000円使用する予定である。また、研究協力者である京都大学・三上文三教授との打ち合わせのための旅費として(京都:10日間)概算20,000円使用する予定である。 【人件費・謝金】0円 【その他】論文の投稿・出版費用として50,000円使用する予定である。
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Research Products
(3 results)