2011 Fiscal Year Research-status Report
クライオ電子顕微鏡を用いた相関顕微鏡法による神経筋接合部の分子メカニズムの解析
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23570196
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
宮澤 淳夫 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (60247252)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ニコチン性アセチルコリン受容体 / 神経筋接合部 / クラスター / 分化 / 相関顕微鏡法 / クライオ走査型電子顕微鏡法 / クライオ透過型電子顕微鏡法 / 共培養 |
Research Abstract |
神経筋接合部(NMJ)のポストシナプスでは、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)をはじめとした情報伝達に関与する種々のタンパク質がクラスターを形成している。これらの集積状態はシナプスの機能と深く関わっていることから、シナプスでの情報伝達を円滑に行うために、クラスター内では機能的に意味のある分子複合体が形成さていると推測される。しかし、生体内で弱い相互作用により結合と解離を繰り返している分子複合体については、生体から取り出して複合体として精製することは困難であるため、未解明な部分が多い。本年度は、まず、筋由来の細胞株であるC2C12細胞を筋管へ分化させてnAChRクラスターを形成させ、それを光子-電子相関顕微鏡観察する方法を確立した。これは、番号が刻まれたカバーガラス上で細胞を培養し、蛍光色素およびコロイド金粒子の結合した抗体を用いてnAChRを標識し、細胞内でのクラスターの全体像や局在を共焦点レーザースキャン顕微鏡で観察した後、同一視野を走査型電子顕微鏡で観察するものである。これにより、クラスター内におけるnAChRの分布や配置を解析することが可能となった。また、nAChRクラスター化にはプレシナプスの関与も報告されている。個々の分子の機能を明らかにするためには、遺伝子操作を再現性良く行うことが可能な細胞株を用いたNMJのin vitroモデルが有効である。そこで、NMJのin vitroモデルを作製するために、筋管へ分化させたC2C12細胞に、神経細胞へ分化させたNG108-15細胞を添加して共培養を行った。NMJの形成には長期共培養が必要となるため、条件検討を行ったところ、5週間の長期共培養を行うことに成功した。また、化学固定や乾燥によるアーティファクトを回避し、より生体に近い状態で観察するため、クライオ走査型電子顕微鏡によるC2C12細胞の観察を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、C2C12細胞を利用してnAChRクラスターを形成させ、相関顕微鏡観察法により共焦点レーザースキャン顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて、クラスターの全体像とクラスター内の分子の分布を対応させて観察する方法を確立することができた。また、神経筋接合部のin vitroモデル作製においては長期共培養が鍵となるが、現在までに5週間の共培養を達成することができた。これらの実験と平行して、C2C12細胞のクライオ透過型電子顕微鏡観察およびクライオ走査型電子顕微鏡観察についても開始しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
nAChRクラスター内には、nAChR以外にも筋特異的受容体チロシンキナーゼ(MuSK)などのnAChRクラスター形成や神経筋情報伝達に必須なタンパク質が数多く含まれている。これらは蛍光抗体標識法を用いた光学顕微鏡観察ではnAChRとの共局在分子として観察されるが、クラスター内における個々の分子の局在や配置は明らかにされていない。そこで、異なる波長の蛍光分子および大きさの異なるコロイド金粒子を結合させたそれぞれの抗体を用いて、複数の分子を同時に標識し、光子-電子相関顕微鏡法を用いてクラスター内における個々の分子の局在や配置の解析を行う。また、nAChRクラスターは、発生初期に形成されるプラーク型クラスターから神経筋接合部の分化に伴って成熟型クラスターへと移行することが知られている。そこで、クラスター構成分子の個々の配置を分化の過程を追って解析する。また、筋管のクライオ透過型電子顕微鏡法(TEM)およびクライオ走査型電子顕微鏡法(SEM)観察に関しても検討を進める。シート上に培養した筋管を急速凍結して凍結切片を作製し、クライオTEMで観察を行うことと平行して、切削ブロック側をクライオSEMで観察する検討を行う。この方法を用いれば、クライオSEMでは細胞表面の観察だけでなく、クラスター形成部分の細胞内の構造も観察することが可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費は、細胞培養、nAChRクラスター構成タンパク質を標識するための抗体等の調製、共焦点レーザースキャン顕微鏡および電子顕微鏡観察に必要な試薬、プラスチック器具等の消耗品を購入するために使用する。旅費は、本研究と関わりのある国内の基礎医学分野の研究者との情報交換および学会での研究成果発表のために使用する。また、学会参加および研究成果発表の費用としてその他経費を計上している。
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Research Products
(2 results)