2012 Fiscal Year Research-status Report
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23570201
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平井 照久 独立行政法人理化学研究所, 三次元顕微鏡法研究チーム, チームリーダー (10450412)
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Keywords | 生体分子 / 蛋白質 / 電子顕微鏡 / 膜輸送体 |
Research Abstract |
本年度は内向き型B3MDの二次元結晶の作製に取り組んだ。サンプルは長崎国際大学薬学部濱崎グループから提供を受け、DEPC阻害剤によってHis834を修飾しB3MDを内向きに固定化(内向き型)したものである(Xiu et al., Biochemistry 2003, Takazaki et al., J.Biochem. 2006)。二次元結晶化はH2DIDSによって架橋されたB3MD(外向き型)の結晶化方法を踏襲すると2週間程度かかる。まずは外向き型の結晶化条件で二次元結晶化を試した。ボタン式透析で結晶化をセットアップし、2週間後に沈殿物を回収し負染色後、電子顕微鏡による観察を行ったがアグリゲーションのみであった。この結果を踏まえ、内向き型の安定性はそれほど高くないと予想された。そこで結晶化時間を短縮するため、カセット式透析によって再度結晶化を行ったが結果はボタン式透析と同じであった。以上の結果から内向き型は外向き型に比べて安定性が低いことがわかってきた。そこで内向き型の最適結晶化条件を見いだすためにゲルろ過カラムにより安定性試験を行った。内向き型を4、13、23℃の3条件で保存し、途中でサンプリングしながらゲルろ過パターンを取得した。どの温度でも経過日数に依存してダイマー画分のピークが減少した。具体的には4℃と13℃ではほとんど同じ減少パターン(一週間でピークの値の半分)を示したが、23℃ではより明らかに安定性が悪くなった(2日でピークの値の半分)。一方比較対象である外向き型では二週間後においてもゲルろ過パターンはほとんど変わらなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点での比較では内向きバンド3の安定性は外向きバンド3に対してかなり劣ると言わざるを得ない。今後は内向き型にグリセロールを添加したバッファ中で同様の安定性試験を行い、安定化剤の影響を調べる予定である。また外向きバンド3の精製純度も結晶化を目標とした場合には必ずしも十分とは言えずまた再現性に関しても改善の余地がある。1つの改善策としてヒドロキシアパタイトカラムを用いて精製度を向上できないかバッファ条件の最適化を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き外向きおよび内向きバンド3の精製純度の向上を目指しそれを用いて二次元結晶化を行う。また我々の作製した二次元結晶にはアグリゲーションが多く含まれる。データ収集を効率的に行うために、二次元結晶からアグリゲーションを分離し二次元結晶だけを無傷な状態で濃縮できる方法を検討する。また、これまで得られたバンド3に関する知見を現段階でまとめて論文のかたちにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
外向き、内向きバンド3いずれもまだ十分な精製純度が得られておらず精製純度の向上に努めている。そのために精製以降のステップである二次元結晶化や電顕観察などを行う頻度が予定より少なくそれらのための試薬代や消耗品代の使用が結果として少なめになっており、結果的に1594,667円の未使用額が発生した。次年度においてはバンド3の精製純度の向上に向けてこれまでの試みに加え、ヒドロキシアパタイトカラムによる精製、ショ糖密度勾配遠心法を利用した二次元結晶からのアグリゲーションの分離などを試みる予定である。H24年度における繰越金とH25年度に予定されていた予算額の合計をそれらのための試薬や消耗品の購入に充当する。さらに、これまで得られたバンド3に関する知見を論文にまとめる予定でありそのための出版費用にも充当する。
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