2011 Fiscal Year Research-status Report
アンチセンスプローブを用いた生きた細胞のmRNAイメージング
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23570207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡部 弘基 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20455398)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | mRNA / 蛍光イメージング / アンチセンスプローブ |
Research Abstract |
本研究では、代表者がこれまでに開発したアンチセンスプローブを用いた生細胞内mRNAイメージング法を、細胞質におけるmRNAを介したダイナミックな翻訳活性調節機構の解析へと応用する。しかし、実際の生細胞内で種々の制御下にあるmRNAの振る舞いを記述するには、細胞内におけるプローブのキャラクタリゼーションや一般性の確立など実用性の課題がある。そこで、本年度は生細胞内におけるアンチセンスプローブの基礎特性を分析し、RNA研究の基盤技術としての確立に取り組んだ。 まず、アンチセンスプローブの細胞内における結合カイネティクスを検証した。プローブを生細胞内にマイクロインジェクション法により導入し、2種プローブのmRNAとの結合に伴うFRETを追跡することによりプローブとmRNAとの結合、解離の結合速度定数や解離定数を算出した。この結果、アンチセンスプローブは細胞内において、およそ1分という短時間で結合することが分かった。これはアンチセンスプローブを用いることにより、分オーダーで起こるmRNAの迅速な発現量、局在変化を追跡できる事を示している。 次に、検討したアンチセンスプローブの特性を活かし、迅速なmRNA局在変化のモニタリングへと応用した。ストレス環境にある細胞において、翻訳中のmRNAがストレス顆粒(SG)と呼ばれる細胞質の一時的な構造体に蓄積する現象を実時間でイメージング追跡した。また、SG形成と内における内在性mRNAの振る舞いを詳しく解析するために、アンチセンスプローブを用いて可視化された内在性mRNA(c-fos mRNA、poly(A)+ mRNA)の運動性を定量的イメージング解析により検討した。その結果、内在性mRNAはSG内において抑留されていることが分かった。本検討は、SGはmRNAの翻訳抑制としての機能を有することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、平成23年度はアンチセンスプローブの細胞内における結合カイネティクスの検証に加えて、任意のmRNAに対するアンチセンスプローブ設計のための標的配列の選択に関する検討を予定していた。しかしアンチセンスプローブが優れた結合カイネティクスを有していたため、迅速なmRNA局在変化のモニタリングの検討を優先した。
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Strategy for Future Research Activity |
任意のmRNAを標的としたプローブを開発するため、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)のmRNAを標的にしたアンチセンスプローブを開発する。プローブの標的配列を選択するため、GAPDH mRNAの翻訳配列のRNA二次構造を参考にしてアンチセンスプローブを設計する。標的と相補的な配列を持つ蛍光(Cy3)標識アンチセンスプローブを受託合成により調製し、生細胞内において内在性GAPDH mRNAとの結合能を蛍光相関分光法(FCS)や蛍光褪色後回復法(FRAP)により評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新規mRNAに対する有効なアンチセンスプローブの開発に必要な消耗品類の購入に充てる予定である。
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