2011 Fiscal Year Research-status Report
Pho85サイクリン依存性キナーゼによる環境ストレス応答と細胞周期制御の同調機構
Project/Area Number |
23570214
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西沢 正文 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20218150)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | シグナル伝達 / ストレス / 細胞周期 / サイクリン / プロテインキナーゼ |
Research Abstract |
1. Pho4によるG1サイクリン発現抑制機構アルカリストレス条件下でCLN2発現は低下するが、Δpho85株ではさらに顕著になる。一方、whi5欠失株ではCLN2発現は上昇する。Pho4を過剰発現させると、野生型株、Δptk2株、Δwhi5株のいずれにおいてもCLN2発現は低下した。逆にPtk2を過剰発現させると野生型株、Δpho4株、Δwhi5株のいずれにおいてもCLN2発現は上昇した。これらの結果は、(i) Pho4にはWhi5とは独立なCLN2発現制御経路があること、(ii) Ptk2はアルカリストレス条件下でCLN2転写を活性化することを示している。2. アルカリストレスシグナルの伝達機構Pho85-Pho80が存在すればアルカリ条件下でもCLN2発現が維持されること、Δpho81株およびΔvip1株ではCLN2発現が低下しないことから、アルカリストレスシグナルは低リン酸シグナルと同様、Pho81 CKIを通してPho85-Pho80に伝えられることがわかった。また、Pho85-Pcl9はWhi5の抑制やCLN3の発現に必要であるが、Δpcl9株ではCLN2発現が低下すること、PCL9発現はアルカリ条件下で低下することもわかった。3. アルカリストレスシグナル伝達にはRim101、Pho4、Crz1の3つの転写因子が関与することが報告されているが、これらはどれもPho85によって抑制される。Rim101、Pho4、あるいはCrz1をそれぞれ過剰発現させるとCLN2発現が低下する一方、Rim101、Pho4、Crz1の3つを同時に欠失させることでpho85欠失によるCLN2発現低下が抑圧されたことから、アルカリストレスシグナルはPho85活性を低下させることで、これら3種の転写因子の活性を上昇させてストレス応答を起こしていると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pho4によるG1サイクリン発現制御機構について、当初の予想とは異なる知見が得られたが、Pho4はCLN2発現を抑制して細胞周期進行を止めると同時に、Ptk2を活性化してH+を放出させ、アルカリ環境への適応を図ることが示唆され、新たなサイクリン発現制御機構およびストレス応答機構の解明につながる結果が得られている。また、アルカリストレスシグナルの伝達機構については、Pho85-Pho80の制御がPho81 CKIによって行なわれること、Pho85-Pcl9活性はそれとは別個にアルカリストレスによって制御されること、Pho85による制御はPho4、Rim101、Crz1の3つの転写因子の活性制御を介していることなど、予定を上回って解析が進んだ。ただ、Pho85によるCLN2発現制御はこの3種の転写因子を介する経路だけではない事を示唆する結果も得られているので、更なる解析が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. Pho4がCLN2発現を抑制する機構について、CLN2プロモーター領域のクロマチン構造への影響を中心に、Whi5同様HDACをリクルートする可能性、Tup1/Ssn6の関与の可能性などについて調べる。また、Pho4過剰発現がWhi5とHDACの相互作用およびWhi5の核外輸送それぞれに及ぼす影響について調べる。2. Pho85がCLN2発現を活性化する機構について、Pho85によるWhi5のリン酸化とHDACとの相互作用についてWhi5のリン酸化部位変異体を用いて詳細に調べる。またPho4過剰発現がCdkあるいはPho85によるWhi5のリン酸化に影響を及ぼすかどうかをLC/MS/MSを用いて解析する。3. アルカリストレスシグナルの伝達機構およびCLN3の発現制御機構については計画通りに進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究補助員について適当な人材が見つからなかったため、予定していた費用を消耗品購入に振り替えた。また、効率的な物品調達を行ったため未使用額が発生したが、次年度の消耗品購入額に充てる予定である。その他の研究費については予定(交付申請書)通りに使用する計画である。
|