2013 Fiscal Year Annual Research Report
着床による幹細胞の性質転換とNodalシグナルの多能性維持機能の獲得
Project/Area Number |
23570233
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
角 智行 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90378894)
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Keywords | 発生・分化 / 幹細胞 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究では、初期胚発生過程の内部細胞塊として胚性幹細胞を、原始外胚葉としてエピブラスト幹細胞(EpiSCs)をモデルとし、着床前後に生じる幹細胞の性質転換がどの様な分子機構によって成立するのか、その解明に取り組んだ。特にNodal/Smad2, Wnt, Fgfシグナルに焦点を当て、着床前後の幹細胞における多能性維持における役割を明らかにする事を目標とした。 E5.5日の原始外胚葉とEpiSCsの遺伝子発現プロファイルを比較した結果、E5.5日に比べEpiSCsでは中胚葉・内胚葉マーカーの発現が高く、また古典的Wntシグナル下流の遺伝子群が多く発現していた。WntシグナルはマウスES細胞においてはその多能性維持の働きをしているが、胚発生においては原条形成・中胚葉誘導を担う重要なシグナル経路である。そこで、EpiSCsにおけるWntシグナルの役割を明確にするため、このシグナルを活性化するCHIR99021でEpiSCsを処理した結果、未分化マーカーの発現減少に伴い中胚葉への分化が認められた。逆に、Wntシグナルを抑制するXAV939で処理すると、EpiSCsはその自発的分化が抑制され、より均一な細胞集団として維持できた。次に、幹細胞株樹立時におけるXAVの効果を検討した。E6.5日胚の原始外胚葉からEpiSCsを樹立する際、Activin, Fgf2だけでは自発的分化を抑えきれず樹立・維持は困難であったが、XAVを添加することで樹立効率が飛躍的に改善した。XAV存在下で樹立・維持されたEpiSCsは、E6.5日胚に移植すると三胚葉に由来する細胞種に分化可能であり多能性を維持していることが確認された。 この様に古典的Wntシグナルは、EpiSCsの多能性維持に必要で無い事が明らかとなった。Wntシグナルを阻害する低分子化合物を用いることで、EpiSCsと同じプライム型であるヒトES細胞やヒトiPS細胞の樹立・維持においてもその効果が期待される。
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Research Products
(2 results)