2011 Fiscal Year Research-status Report
ストレス応答性新規核ー細胞質間分子輸送機構とその機能解析
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23570242
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小瀬 真吾 独立行政法人理化学研究所, 今本細胞核機能研究室, 専任研究員 (90333278)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 核-細胞質間輸送 / 分子シャペロン / 熱ショック / ストレス |
Research Abstract |
核と細胞質間分子輸送は主にImportin βファミリー分子によって担われる。しかし、細胞ストレス応答時には、Importin βファミリー分子依存的な輸送の活性が顕著に低下する。その一方で、代表的な分子シャペロンHsc70/Hsp70(Hsp70s)などは、熱ストレスなどに応答して速やかに細胞質から核に集積することが知られていたが、その分子機構は不明であった。セミインタクト細胞を利用したin vitro輸送系を用いて、熱ショック処理した細胞抽出液からHsc70核内移行に必須な分子を生化学的に精製・同定し、この分子をHikeshi(火消し)と命名した。 Hikeshiは、ATP型Hsp70sと効率よく結合する活性を持つ。また、幾つかの核膜孔構成タンパク質FG-Nupと直接結合し、核膜孔を通過する活性を持つ。これらの結果から、Hikeshiは熱ショック時にATP型Hsp70sを核に運ぶ新しい運搬体分子であることを明らかにした。siRNAによりHikeshi発現量を低下させた細胞では、熱ショック時においてもHsp70sの核内移行は促進されず、熱ショック後の細胞生存率が顕著に低下した。さらに、正常温度に戻しても、Hsp70 mRNA発現上昇、HSF1の核内ストレス顆粒形成や核小体タンパク質の局在変化などのストレス応答状態が長く持続していることが観察された。また、核局在化Hsc70を発現させると、siRNA-Hikeshi処理細胞の熱ストレス後の生存率が50%程度上昇した。これらの結果は、熱ストレスからの細胞保護や回復に、Hikeshi依存的輸送経路(少なくともその一部はHsp70sの核内機能)が重要な役割を果たしていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
核-細胞質間の新規運搬体分子の同定に成功し、学術論文として報告することが出来た。その一方でこの新規分子の生細胞内イメージングや線虫での解析準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新規同定分子の機能解析を中心に進める。特に生細胞での分子イメージング測定により、正常時とストレス時での運搬体分子を基質の相互作用変化の測定を行う。また、生化学的解析により、Hsp70分子シャペロンシステムにおける機能を探る。さらに線虫を用いて寿命や細胞老化等への機能解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究推進状況を考慮し、当初予定の高解像微分干渉部リズムスライダ購入を前年度は見合わせた。前年度残りの研究費を含めて今年度の購入費に使用する。さらに残りの研究費を主に遺伝子工学用試薬やタンパク質精製用試薬、細胞培養用試薬に使用する。
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Research Products
(5 results)