2011 Fiscal Year Research-status Report
小型魚モデルの利点を駆使した脳形成オーガナイザーの形成制御機構の解明
Project/Area Number |
23570247
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
弥益 恭 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60230439)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 哲規 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (10466691)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ゼブラフィッシュ / 脳形成 / 遺伝子制御 / 転写制御 / エンハンサー解析 / 転写調節因子 / GAL4-UAS系 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
1.中脳、小脳形成を制御する峡部オーガナイザーの形成遺伝子gbx2について、熱誘導性プロモーターにつないだ上でゼブラフィッシュゲノムに導入した。得られたトランスジェニック(Tg)系統の胚において、原腸形成終了期でgbx2を誘導した際に峡部欠損が顕著に見られること、その際にotx2遺伝子の発現が直ちに低下すること等を見出した。この誘導系により、原腸形成終了期にgbx2強制発現で直ちに発現が変動する遺伝子群をマイクロアレイ法により網羅的に同定した。現在、これら同定遺伝子の発現について、in situ法、qPCR法により検討を進めている。2.前脳形成オーガナイザー(前方神経境界、ANB)の形成制御機構を明らかにするために、ANB形成遺伝子emx3の転写調節機構を検討した。すでに上流-2.9 kbから-2.0 kbまで(-2.9/-2.0領域)が終脳特異的エンハンサーであることを示していたが、今回、-2.2/-2.1領域に絞り込むことに成功した。現在、この領域に結合しうる転写因子をゲルシフト法等により検討している。3.脳形成の遺伝子制御機構を明らかにするため、GAL4-UAS系の導入を進めた。以前に作製した活性型FGF受容体遺伝子ca-R3にUASをつないでゲノムに導入し、得られた系統魚とGAL4を全身的に発現させる系統魚を交配することで、子孫胚において実際にca-R3が誘導されること、主として頭部形成の異常を誘発できることを示した。また、前脳形成遺伝子(emx3とfoxg1)にUAS配列をつなぎ(UAS-emx3、UAS-foxg1)、これらとGAL4 mRNAを胚に共導入することで、emx3及びfoxg1の発現を誘導できることを確認した。これら遺伝子のゲノムへの導入に成功し、さらにGAL4-UAS系での誘導実験にも着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、中脳、小脳形成を誘導し,さらにパターン形成を行うシグナルセンターの峡部に関して形成制御機構を理解することを目指しており、峡部をその後形成することになる中脳後脳境界(MHB)を決定し、さらに引き続いて進行する峡部形成にも関わるgbx2ホメオボックス遺伝子に着目し、その時期特異的誘導系を確立した。この実験系自体、MHB、峡部形成の遺伝子制御についてgbx2を中心に解明する上で強力な武器であり、今後の研究推進を可能とする。実際、この実験系を活用することによりgbx2の作用時期の特定に成功しており、その下流標的遺伝子の網羅的解析に向けた研究も始まった。すでにgbx2の下流遺伝子候補が多数予想されており、今後の成果が期待できる。 また、ANB形成の基盤を知る上で、ANB形成遺伝子emx3のANB特異的発現制御は重要な課題であるが、すでに終脳特異的エンハンサー活性を約100 bpの領域内に見出した。このことはemx3の領域特異的発現制御機構を詳細に明らかにする上での重要な手がかりを提供するものであり、今後、この領域に集中して効率的に研究を進めることが可能となった点は重要である。 また、脳形成における制御遺伝子の役割を特定の時期、領域において解析する上で、時期・領域特異的かつ柔軟な遺伝子強制発現系が不可欠であるが、本研究で、GAL4-UAS系をゼブラフィッシュに導入する上での基盤が達成された。さらに現在UASの制御下に置いた脳形成遺伝子のゼブラフィッシュゲノムへの導入が進行中であり、今後、この手法をさらに改良することで、研究のさらなる高度化が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.すでにgbx2により発現が制御される遺伝子についてマイクロアレイ法での同定を進めており、今後、この同定作業をさらに進めると共に、各同定遺伝子の脳形成における機能についての検討を進める。また、これらの遺伝子発現の制御におけるgbx2の役割を検討する。Gbx2タンパク質についてはその生化学的機能がほとんど知られていないため、培養細胞系での転写制御能、分子内各小領域の脳形成における機能、生化学的性質の検討も併せて行う。最終的に、これら同定遺伝子群及びgbx2から構成される峡部形成遺伝子ネットワークの解明を進める。2.我々は脳形成シグナルセンター(峡部、ANB)に特異的に発現する制御遺伝子(峡部、gbx2、pax2a、fgf8;ANB、emx3、fgf8)の脳領域特異的エンハンサーをこれまでに同定している。これらについて、Tg魚でのレポーター解析に加え、胚性癌細胞(P19C6)を用いた培養系でのレポーター解析を併せて行う。さらに、転写制御に関わるtrans因子、cis-エレメントに関し、生化学的解析、ChIP解析、エピジェネティクス解析等を並行して進めることで、関与する制御因子を含めた発現制御の詳細を明らかとする。3.脳形成の遺伝子制御を個体レベルで詳細に解析することを目的としたゼブラフィッシュGAL4-UAS実験系の開発をさらに進める。現在、UAS系統について発現レベルが充分高くないという問題があり、UAS系統作製についての条件の検討が重要課題となる。GAL4は現在NBRPから入手しているが、今後、研究室で保有するエンハンサーを利用してGAL4系統の開発も進める。そうした上で、このGAL4-UAS系により、ANB、視床、視床下部及び峡部に注目して脳形成制御機構の検討を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.gbx2下流遺伝子の探索のため、gbx2の誘導条件を変えた上での再度のマイクロアレイ解析を予定している(約40万円)。2.各種脳形成遺伝子の脳領域特異的エンハンサーの解析を培養細胞系で詳細に解析するため、細胞培養、レポーター解析等を予定している。また、ChIP解析に用いる転写調節因子抗体の購入、作製を予定している(約30万円)。3.GAL4-UAS系での解析において、蛍光レポーターの詳細な解析に必要な倒立顕微鏡用の蛍光フィルターを新たに2種類購入予定である(約30万円)。4.その他、一般的分子生物学実験、実験動物(ゼブラフィッシュ)の維持に使用することを予定している。
|