2012 Fiscal Year Research-status Report
両生類網膜再生の初期過程を制御する細胞結合の調節機構と色素上皮の分化転換
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23570255
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
荒木 正介 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (00118449)
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Keywords | 網膜再生 / 色素上皮細胞 / MMP / ギャップ結合 / N-cadherin |
Research Abstract |
両生類の網膜再生の細胞と分子のメカニズムを、成体のアフリカツメガエルをモデルにして動物および組織培養を用いて研究をおこなった。特に、独自に開発した2つの組織培養系を用いて、色素上皮細胞が分化転換し、神経細胞に分化する過程で、(1) 再生の最も初期段階である基底膜との相互作用の変化、(2) 細胞間結合とRaxおよびPax6遺伝子の発現、について前年度に引き続き研究を進めた。 (1) 再生の初期過程の現象として、色素上皮細胞が基底膜から遊離する。これはMMP (Matrix metalloprotease)の発現によると予想される。実際にMMPsの発現上昇を定量的PCRを用いて調べた。動物の眼から網膜を除去し、24時間後、3日後、5日後に色素上皮および脈絡膜を採取し、11タイプのMMP遺伝子の発現を調べた。その結果、MMP9およびMMP18遺伝子発現が24時間後にかなり上昇する。また、培養下でMMP阻害剤の効果の再実験をおこない、色素上皮細胞が基底膜から遊離、移動しないと神経細胞に分化しないことや増殖しないことを確認し、この効果が可逆的であって、阻害剤を除去すると移動、分化することを確認した。これらによって、網膜除去の結果、何らかのシグナルの作用により色素上皮細胞でMMPが発現し、それによって細胞が遊離、移動することが示された。(2) フラットな組織培養下で、細胞の接着状況をN-cadherinおよびConnexin43の抗体によって調べ、その分布とRaxおよびPax6の発現との対応関係を明らかにした。Connexin43をもつ色素上皮細胞ではRaxの発現が見られ、Connexin43をもたない細胞ではRaxは抑制され、一方N-cadherinをもつ色素上皮細胞ではPax6は弱く発現するが、N-cadherinを失うと発現レベルが上昇した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度計画の推進によって、細胞間の結合と網膜再生に必須の遺伝子RaxおよびPax6の発現制御の関係がほぼ明らかにされた。ただし、その因果関係はまだ不明であり、次年度には遺伝子発現抑制、過剰発現等の手法を用いて研究を進める。また、再生の最も初期段階で起こる現象としてMMPの発現上昇を明らかにしたことは大きな成果であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
両生類の網膜再生過程をほぼ再現できる組織培養系を用い、これを眼の中の再生過程と比較検討しつつ、研究を進めることが本研究の大きな特徴であり、この組織培養系の特徴を最大限生かして、網膜再生初期過程の機構を明らかにする。特に、再生に必須の遺伝子RaxやPax6の発現が具体的にどのように制御されているのか、また細胞遊離にはたらくMMPの発現が何によって誘導されるのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度には、Wntシグナルが再生初期過程ではたらいているのかどうかを調べる。また、RaxやPax6遺伝子の発現が細胞接着によって直接制御されているかどうかを調べるために、遺伝子発現抑制、過剰発現等の実験を予定しており、これらに必要な試薬、抗体に研究費を使用する。
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Research Products
(12 results)