2011 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌とRNAファージQβから成るモデル共進化系における宿主ゲノムの経時変化解析
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23570268
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
柏木 明子 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (40362652)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 共進化 / 実験室内進化系 |
Research Abstract |
共進化系では生物間相互作用を通して、ある生物種の適応とそれに対する別種の抵抗適応が生じるため、共進化は進化を促進すると考えられている。しかしながら、両者の全ゲノムレベルを解析し、変異の固定速度が実際に上昇することを示した例はない。本研究課題は、申請者が今までに構築した世代時間の短い大腸菌とそれに感染するRNAバクテリオファージQβ(Qβファージ)を用いた実験室内共進化系での宿主である大腸菌のゲノム変化を解析することを目的としている。背景として、今までに申請者が実験室内共進化系でのQβファージゲノムの経時変化解析と両者の表現型の経時変化解析を行ったところ、両者が変化し続ける軍拡競争が生じていると考えられるモデル系を構築できたこととQβファージの分子進化がQβファージ単独進化と比較して約3.4倍加速されていた。このことから、宿主である大腸菌においてもゲノムの分子進化速度が加速している可能性が考えられた。初年度は宿主大腸菌の全ゲノム変化を解析するために、次世代シークエンサー(イルミナ社)を用いた。次世代シークエンサーで検出された変異箇所は、サンガー法(ジデオキシ法)によって確認した。その結果、申請者が構築した大腸菌とQβファージのモデル進化系における宿主大腸菌のゲノム進化速度は、いくつかの論文で示されている大腸菌だけの単独進化における進化速度と比べて約10倍大きくなっていることを明らかにした。以上より、適応とそれに対する別種の抵抗適応が生じる共進化においては、進化を促進することを分子レベルで明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室内共進化系における宿主である大腸菌のゲノムを次世代シークエンサーにて解析し、変異箇所の同定と変異の固定速度を求めることを初年度の計画としていた。初年度は、大腸菌が持つ性繊毛合成関連遺伝子traQ及びゲノム上のcsdA遺伝子にアミノ酸置換を伴う変異が生じていたことを同定した。それらから変異の固定速度を求めた。上記計画を達成したため、計画通りに順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に検出された宿主大腸菌ゲノム及びFプラスミド上の変異の機能解析を行う。具体的には、検出変異を進化実験開始時の大腸菌ゲノムもしくはFプラスミドに戻し、機能変化が生じるか、また適応度はどの程度変化するのかを計測する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
検出された変異を宿主大腸菌に戻す操作は分子生物学的実験法で行う。そのため、それらの実験に必要な酵素類、プラスティック器具類等の消耗品として使用する予定である。 また、初年度の研究成果の発表や今後の研究推進に必要な情報を収集するために国内の学会に参加する旅費として使用する予定である。
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