2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒト特異的な発現・機能の変化を示すシアル酸受容体Siglec-11の進化
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23570271
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早川 敏之 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (80418681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安形 高志 独立行政法人理化学研究所, システム糖鎖生物学研究グループ, チームリーダー (40371017)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヒトの進化 / ヒト化 / シアル酸 / 受容体 / 遺伝子変換 |
Research Abstract |
ヒトSiglec-11はシアル酸受容体であり、Siglec-16遺伝子による遺伝子変換によってヒト特異的にシアル酸認識能が変化したと考えられている。このヒト系統での遺伝子変換の分子進化学的解析をおこない、ヒトSiglec-11の機能の変化が約100万年前におこったと推定した。ヒトではシアル酸の一種Neu5Gcを産生する酵素CMAHが、約300万年前に不活性化し、ヒト特異的にNeu5Gcは欠失している。興味深いことに、ヒトSiglec-11はNeu5Gcに対する認識能が顕著に低下しており、我々の推定から低下は約100万年前に生じたと考えられる。ヒトSiglec-11のシアル酸認識能の変化が、CMAHの不活性化の後に生じていることから、ヒトSiglec-11のNeu5Gcに対する認識能の低下は、CMAHの不活性化、つまりNeu5Gcの欠失への適応だと考えられる。このことは、ヒト系統におけるCMAHとSiglec-11の協調的進化を示している。 さらに、ヒトSiglec-16遺伝子のハプロタイプ解析により、ヒト系統での遺伝子変換は、ヒトSiglec-16遺伝子の不活性化アリールによるものであることが分かった。不活性化アリールは第2エクソンに4bpの欠失を持つが、ヒトでの遺伝子変換は、この欠失を避け、Siglec-11遺伝子が偽遺伝子化しないように、複雑な形で生じていた。このことは、遺伝子変換によるSiglec-11の機能変化は進化的選択の結果であり、ヒトSiglec-11の進化が特殊であることを示している。 本成果は、ヒトSiglec-11がヒトの進化に関係していることを示唆しており、ヒト化の分子基盤を理解するための一助となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的にて提示した4つの課題のうち、Siglec-11、CMAHのヒト特異的変化の進化的関係、およびSiglec-11のヒト特異的な変化に対する自然選択という2つの課題について、知見が得られている。また、ヒト以外の霊長類での特殊な進化の有無という課題についても研究を進め、予備的な知見が得られている。このため順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画にもとづき、DNA配列の決定と組換えタンパク作製をおこなうとともに、DNA配列解析をおこない、得られた成果を論文等に発表する。なお平成23年度の研究の進展にともない、成果の一部を論文発表するため、年度間で実施内容の一部入れ替えをおこなった。この入れ替えは研究計画を変更するものではない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度実施予定のDNA配列の決定および組換えタンパク作製の一部と、平成24年度実施予定のDNA配列の解析の一部の入れ替えにともない、平成23年度の実験に関わる研究費の一部を平成24年度に繰り越し使用する。これに関連しない実験および解析に必要な研究費は、計画通りに使用する。
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Research Products
(1 results)