2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロRNAと転写因子による協調的制御の分子進化
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23570273
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
岩間 久和 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (20398035)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 転写因子 / 協調的制御 / 遺伝子の生成死滅過程 / ゲノムアライメント / HITS-CLIP / PAR-CLIP |
Research Abstract |
保存されたマイクロRNAのターゲット配列と転写因子結合サイトは、当初のアライメント手法に加え、Ensemblより利用可能な、Enredo、Pecan、Ortheusの3手法を主に用いた35種の哺乳類ゲノムアライメント、Pecanを主に用いた哺乳類を含む19種の羊膜動物のゲノムアライメントを利用するようプログラムを整えた。これにより、ゲノム間のシンテニーをより正確に反映した保存されたターゲット配列の同定が可能になった。このアライメントを用いて、保存された、転写因子結合サイトの網羅的検索を行った。マイクロRNA自体の生成・死滅の過程が速いことが知られている。このことから、上記の方法を加えることにより、現存するヒトの1444マイクロRNA(2012年3月現在の解析)のそれぞれが進化上、どの時点で生じたかを推定することが可能となった。マイクロRNAターゲットサイトの保存を調べる上で、各マイクロRNAが生成した後の保存情報にのみ注目することにより、より確度の高い保存配列を得ることが可能になる。また、ヒト1444マイクロRNAの生成時期が原獣類・後獣類から哺乳類の各進化段階を追って特異的な分布を示すことが明らかになったので、発表・投稿準備中である。マイクロRNAと転写因子との協調的回路の同定において、これまでの手法に加え、上記のマイクロRNAの生成のより詳細な進化的時期を考慮に入れ解析できるようアルゴリズムの改善に着手した。マイクロRNAのターゲットサイトを網羅的に実験で調べるHITS/PAR-CLIP法等によるデータ、および転写因子結合サイトの網羅的実験同定法であるChIP-Seq法によるデータを収集し、スキームを決めた整理をおこなった。これにより、進化的保存の有無にかかわらない、転写因子とマイクロRNAのターゲットサイトのリスト化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロRNAと転写因子の協調的制御を明らかにする上で、種間のゲノム配列中の、保存配列と非保存配列の確度の高い峻別は不可欠である。この点で、シンテニーを考慮した40種余りのゲノムアライメントを使用した解析が可能となった点は、当初の計画を越える進展である。また、このアライメントからヒトのマイクロRNA遺伝子自体の生成時期の推定が可能となった点も、当初の計画を越える内容となった。この方法論は原理的に、ヒト以外の種にも適応可能である。一方、上記の結果データは、当初の計画より、さらに詳細で連続性の高い基礎データを提供することから、マイクロRNAと転写因子との協調的回路の変遷を知るためのアルゴリズムのさらなる改変を要するようになった。これは点についての対応可能である。以上の状況と、現在のところ障害となる問題が生じていないこととを総合して、おおむね順調な進展と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、立案時の計画に従って推進する。他、推進に当たっての細かな対応として、マイクロRNAの網羅的な実験手法について、HITS-CLIPに比して、PAR-CLIPのデータ蓄積の伸び率が良いので、PAR-CLIPデータをも積極的に取り入れる。基本的に得られる結果データはいずれの場合も同様の形式として扱える。また、当初、マイクロRNA遺伝子自体を保存されたマイクロRNAと種特異的マイクロRNAとに区分していたが、一連の解析により、原獣類から哺乳類に渡る詳細なマイクロRNAの生成時期が推定可能となったので、当初の単純な二分類から時間軸に沿ったより詳細なマイクロRNA遺伝子の分類を考慮に入れ、解像度と確度の高い解析を進める。そのためのマイクロRNAと転写因子との協調的制御を描出するためのアルゴリズムに改善を加え、結果データの解析を行う。得られた知見は逐次、学術雑誌・学会での発表をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実績に記したヒト・マイクロRNA遺伝子族の生成時期分布の進化的特性について、論文出版と学会発表を行うので、論文出版費用と旅費として研究費を使用する。同様に、新たに得られる知見について、学会・論文発表を行う。具体的には、当初の計画通り日本遺伝学会と日本進化学会での発表を計画している。 ゲノムアライメントを行う種が大幅に増加したことより、ハードディスク・ストレージの増強が必要となる可能性が高い。ハードディスクと、必要量が多い場合には、ストレージシステムに支出する予定である。
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Research Products
(2 results)