2012 Fiscal Year Research-status Report
学際的研究で明らかにする関東地方縄文時代人の人類学的・考古学的実像
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23570280
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
安達 登 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (60282125)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂上 和弘 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (70333789)
澤田 純明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10374943)
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Keywords | Jomon / ancient DNA / mitochondrial DNA / haplogroup |
Research Abstract |
長野県高山村湯倉洞窟遺跡出土の縄文早期人骨についてのミトコンドリアDNA解析の結果を、Anthropological Scienceに投稿し、受理された。これは現時点で、本邦における最古の人類遺伝学的データである。 また、東京都西ヶ原貝塚、千葉県宮本台遺跡および草刈貝塚出土の関東地方縄文時代人18個体についてミトコンドリアDNA解析をおこない、8個体からデータを得た(2012年11月4日、第66回日本人類学会大会にて報告)。 これら8個体に観察されたハプログループは、N9b1が2個体、N9b2が1個体、N9b*が4個体、M7a2が1個体であり、既報の関東縄文時代人より北日本縄文時代人に類似したハプログループの種類および出現頻度を示した。しかし、N9b2はこれまで縄文時代人からは報告例のないものであった。 ハプログループN9b2の分布は日本列島に限局しており、現代人のデータベースにみられた4個体中3個体が沖縄のものである。これまでの報告では、ハプログループN9bの起源はユーラシア大陸北東部が有力視されていたが、本研究の成果から、このハプログループが日本列島にもたらされた経緯については従来より複雑なシナリオを想定する必要があるものと考えられた。また、本研究の結果は、所謂「縄文人」を遺伝的に均一な集団として捉えることが難しいことを示唆している。つまり、「縄文人」よりも「縄文時代人」という呼称の方が、この人類集団の実体を正確に反映しているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長野県高山村湯倉洞窟遺跡出土の縄文早期人骨についてのミトコンドリアDNA解析の結果を、Anthropological Scienceに投稿し、受理された。これは、現時点で本邦における最古の人類遺伝学的データであり、日本列島の基層集団の持つ遺伝子型の実像を明らかにする上でその意義は大きい。 また、関東地方縄文時代人18個体についてミトコンドリアDNA解析をおこない、8個体からデータを得ることができた。これらのうち、東京都西ヶ原貝塚の1個体から検出されたハプログループN9b2はこれまで縄文時代人からは報告例のないものであった。この成果は、従来北東アジア起源が有力視されていたハプログループN9bが日本列島にもたらされた経緯について、従来より複雑なシナリオを想定する必要があることを示唆し、また同時に、所謂「縄文人」が遺伝的に均一な集団とはいえないことを示唆した点でも意義深いものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
西ヶ原、宮本台、および草刈遺跡出土人骨に関するデータを論文にまとめ、今年度中に受理されるよう投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品の値引きにより、2510円の次年度繰越金が発生した。この費用は25年度の消耗品購入に使用する予定である。
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Research Products
(21 results)