2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570282
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大石 高生 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (40346036)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 分子・遺伝 / マイクロアレイ / 大脳皮質 / マカク / 発達・加齢 |
Research Abstract |
老齢マカク、若齢マカクの海馬および背外側前頭前野の遺伝子発現をDNAマイクロアレイ法で検討した。発現が老化によって特異的に増加あるいは減少している機能遺伝子群をPAGE法で検討したところ、炎症反応、免疫反応に関わる遺伝子群の発現は雌雄、部位を問わず増加し、ミトコンドリア機能に関わる遺伝子群の発現は雌雄、部位を問わず減少していた。シナプス伝達に関わる遺伝子群の発現は雄よりも雌で、前頭前野より海馬で、低下が著しかった。海馬における雌マカクの遺伝子発現の加齢変化をデータベース上のヒトの老齢女性のものとPAGE法を用いて比較したところ、ヒトでもマカクでも炎症反応、免疫反応に関わる遺伝子群の発現は増加し、イオン輸送に関わる遺伝子群の発現は減少していた。種差が見られたのはミトコンドリア機能と髄鞘化に関わる遺伝子群で、ヒトでは老化によってミトコンドリア機能の強化、再髄鞘化を示唆する遺伝子発現増加があり、マカクではミトコンドリア機能の低下、脱髄を示唆する遺伝子発現現象が見られた。これらの遺伝子発現の加齢変化に関わる転写因子をパスウェイ解析で探索中である。 大脳新皮質の7領野、海馬、被殻および小脳の発達における転写因子遺伝子発現解析では、どの部位でも発現が非常に低いもの、発現変動がほとんどないもの、どの部位でも発達過程で同様な発現変化を示すもの、部位間で発現変化パターンが異なるもの、同一部位の複数サンプルで発現が安定しないものがあった。発現がサンプル間で異なるものには、神経活動依存性の強い転写因子が含まれ、実験殺時の当該部位の神経活動の強弱を反映しているものと考えられる。 免疫組織化学実験用の脳標本の作製準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マカクの海馬、背外側前頭前野の遺伝子発現の加齢変化を明らかにすることができた。そのマスタースイッチと考えられる転写因子群の探索が進行中である。脳の各部位の転写遺伝子発現の発達過程の概要が明らかになりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
個別の遺伝子やパスウェイの解析をPC上で進めつつ、その中から選択した一部の遺伝子に関し、免疫組織化学的解析を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
解析ソフトウェアの購入、抗体類、試薬類の購入および研究発表のための旅費に用いる。
|