2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570284
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
近藤 信太郎 日本大学, 歯学部, 教授 (60186848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 宗孝 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (20167539)
松野 昌展 日本大学, 歯学部, 講師 (10297848)
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Keywords | 下顎骨 / 霊長類 / 下顎隆起 / 下顎窩 / 下顎神経 / 卵円孔 |
Research Abstract |
下顎骨外側面にみられる骨隆起および凹みの存在を明らかにする目的で,昨年度に引き続き,数種の霊長類の下顎骨を肉眼的に観察した。当初は下顎体に見られる隆起あるいは凹みを観察する目的であったが,観察中にそれ以外の頭顔面部に骨隆起が認められる個体に遭遇した。アカコロブス属(アカコロブスとオリーブコロブス)およびコロブス属(キングコロブス)の下顎体中央部には骨隆起が認められなかったが,下顎技前縁の斜線の延長上に骨隆起を認めるものがあった。昨年度までに観察してきたマカク属(ニホンザル,アカゲザルなど)に見られた典型的な下顎鯛中央部に見られる骨隆起とは別のものである。隆起が認められた部位は咬筋付着部の前縁に相当する。キングコロブスにおける隆起をCT画像で確認したところ,緻密骨で構成されていることが分かった。このような隆起はニホンザル,アカゲザルにも認められる。このため,系統的に出現するのではなく,咬筋の付着に関連した適応的な骨改造によるものと推測される。この隆起の発達程度に個体差が認められるので,今後はどのような個体において隆起が発達するか検討したい。ムーアモンキーにおいて眼窩上隆起が通常より肥厚した個体に遭遇した。この個体をCT画像によって検討したところ,隆起部は緻密骨で構成されていることが分かった。眼窩上隆起は機能的に負荷のかかる部位とはいえないので,この隆起の成因は推測できないが,他の隆起と同様に緻密骨であったことから何らかの生理的な要因によるものと思われる。本年度は骨隆起と平行して下顎神経の経路となる卵円孔の形態も観察した。ニホンザルでは卵円孔の後壁は側頭骨で形成されるが,類人猿とヒトでは蝶形骨で形成される。マカクから類人猿,ヒトへと進化するとともに翼所突起外側板の前後径が短くなり,翼状突起外側板の孔は大型類人猿とヒトでは見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が,愛知学院大学から日本大学に移籍し,講座責任者となった。そのため,教育・研究の負担が大きくなり,自分自身の研究時間を確保することが難しくなったため。また,研究材料が保管されている京都大学霊長類研究所から所属機関までの距離が遠くなったため,頻繁に出張することが難しくなったことも研究がやや遅れている理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究材料のある京都大学霊長類研究所と現所属機関は以前より離れてしまったため,教育の負担のない夏期休暇等を利用してできる限り研究を進めるようにしたい。愛知学院大学の研究分担者と十分な連携を取ってデータの収集に努めたい。今年度は下顎体部以外の部位にも骨隆起が見られることが分かり,その点では大きな前進と考えている。今後は隆起の出現部位と加齢変化を検討していきたい。今年度より現所属の分担者が増えたので,液浸標本の剖出なども積極的に行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査対象をニホンザル,アカゲザルに絞り込み,個体数を増やすこと,加齢変化や性差を検討することを主目的として研究を行う。可能な限りCT撮影を行って,詳細なデータを収集したい。データのデジタル化に必要なパソコン用品,写真撮影機材等の消耗品を必要とする。ニホンザルの液浸標本を剖出するための解剖器具,ホルマリン防護具が必要である。 千葉県松戸市(日本大学松戸歯学部)から材料のある愛知県犬山市(京都大学霊長類研究所)への調査旅費が必要である。調査と平行して,愛知学院大学の研究分担者との研究打ち合わせを行う予定である。
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Research Products
(2 results)