2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23570284
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
近藤 信太郎 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (60186848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 宗孝 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (20167539)
松野 昌展 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10297848)
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Keywords | 下顎骨 / 霊長類 / 下顎隆起 / 下顎窩 / 下顎神経 / 卵円孔 / 緻密骨 / 頬袋 |
Research Abstract |
霊長類の下顎骨外面に見られる窩または隆起を調査した。材料はマカク属(ニホンザル,アカゲザル,タイワンザル),オナガザル属(サバンナモンキー),マンガベイ属,ヒヒ属(マントヒヒ),マンドリル属(マンドリル),小型類人猿(テナガザル),大型類人猿(チンパンジー)の頭蓋骨標本で,肉眼およびCTを用いて観察した。マカク属とサバンナモンキー属では種によって頻度は異なるものの隆起および窩の両者が見られた。窩・隆起ともに10~20%程度の出現率であった。ヒヒ属およびマンドリル属では隆起は見られず、観察した個体では100%に窩が見られた。小型類人猿やコロブス属では窩のみが認められた。大型類人猿では隆起も窩も見られなかった。隆起は第三大臼歯萌出後,窩は第二大臼歯萌出後に出現した。 隆起は下顎体中央部に見られるもの,下顎底に見られるもの,斜線に連続するものの3パターンの個体変異が認められた。CT観察により隆起部は緻密骨から成ることが分かった。ヒヒ属やマンドリル属では下顎体部が薄くなって窩となるものが見られ,マカク属やサバンナモンキー属では下顎骨の外板が湾曲することによって窩となるものが見られた。小型類人猿やコロブス属では下顎底が肥厚して窩となるものが認められた。 マカク属の隆起の成因を検討する目的で,ニホンザルの解剖を行った。隆起が見られる部位には頬筋が構成する頬袋が認められた。ヒトの下顎隆起は咬合に下顎骨にかかる力を緩和するはたらきがあると考えられてきた。とくに下顎体中央部から斜線に至る部位には下顎骨の力線が存在し,隆起はこの力線に沿って存在することから,従来からの考察は妥当と考えられる。解剖の結果から,マカク属の隆起は頬袋に溜め込まれた食餌の刺激による局所的な要因も検討されるべきであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、研究代表者が所属機関を移籍して、講座責任者となったため、研究環境が従来とはことなった。これにより研究がやや遅れていた。今年度はやや取り戻して、かなりの種の観察を増やすことが出来た。しかし、種によっては個体数が少ないものがあり、データの充実に努める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
できる限り出張の機会を増やしてCTデータを確保する予定であるが、個人的に収集しうるデータは限りがある。そこで、京都大学霊長類研究所によりデジタルミュージアムで公開されているCTデータも駆使して、個体数の充実に努める。また、ニホンザルの解剖も並行して行い、考察を深める努力をしていく。さらに結果を論文として公表する準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者が初年度に講座の責任者の代行となり、予定通り研究を進めることが出来なかったため、予算額を執行することが出来なかった。その影響が3年目に至っても十分に解消できなかった。 研究の遅れはある程度まで解消できたので、分析の精度を上げることに努めたい。そこで、解析のためのパソコンやソフトが必要となる。その後、研究成果を公表するよう努めたい。次年度は国際学会で成果を発表する予定である。また、論文の作成時には英文校閲費や印刷費等の経費が必要となる。
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Research Products
(2 results)