2012 Fiscal Year Research-status Report
運動条件に依存する大腿筋活動水準の階層性と生理応答との全身的協関
Project/Area Number |
23570287
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
平木場 浩二 九州工業大学, その他の研究科, 教授 (70173226)
|
Keywords | 外的仕事 / 内的仕事 / 筋電図 / 筋発揮張力 / 筋収縮速度 |
Research Abstract |
平成23年度の実験結果(自転車駆動運動時の筋収縮速度(筋収縮頻度漸増運動:FI)と筋発揮張力(筋発揮張力漸増運動:LI)の変化に対する代謝水準と大腿筋の5部位別の活動水準と階層性の検討)に基づいて、平成24年度においては、被験者10名を用いて、筋発揮張力を一定(負荷=1.0 kp)とし、筋収収縮速度(ペダル回転数)のみを変化(40 rpm、80 rpm、120 rpm)させる6分間の一定負荷運動テストの三試行を実施し、各種変量(ペダル踏力、外的および内的仕事量、酸素摂取量:VO2、血中乳酸濃度:La、大腿筋を構成する5部位(外側広筋、内側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋、半腱様筋)の筋電図の積分値:iEMG、近赤外分光法:NIRSによる外側広筋の酸素化動態)を測定・評価し、筋発揮張力一定で、筋収縮速度の変化条件に対する大腿筋活動水準および大腿筋の表層部および深層部の活動水準の階層性について検討した。一定負荷運動時のVO2水準は、ペダル回転数増加に比例し増加した。40、80 rpmでは運動開始後上昇し、定常値を示すが、120 rpmのVO2は定常値を示さず、緩やかに増加する(VO2緩成分)ことが確認された。さらに、負荷(発揮張力)一定にも関わらず、ペダル踏力(kgf)は120 rpmにおいて他の二つのペダル回転数(40 rpm、80 rpm)と比較して、有意に高い値となった。Laは、40 rpmと80rpmでは殆ど増加を示さなかったのに対し、120 rpmでは顕著な上昇が確認された。このことから、筋発揮張力が一定の設定にも関わらず、筋収縮速度のみの変化でも、筋発揮張力を増加させるとともに、代謝水準にも大きく影響することが考えられた。さらに、筋収縮速度条件の変動に伴い筋活動水準が変化し、大腿筋の表層部および深層部の活動水準にも差異が生じていることが想定された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究主題である「運動条件に依存する筋活動水準の階層性と生理応答との全身的協関」を検討するために、平成24年度においては、予備実験として負荷漸増法による最大下および最大運動テスト(被験者の換気性閾値、最大酸素摂取量の測定は、主実験の代謝ストレス評価と運動強度の推定のために必要)を行なった後、主実験として自転車駆動運動における筋発揮張力を一定(負荷=1.0 kp)とし、筋収縮速度(ペダル回転数)変化条件(40 rpm、80 rpm、120 rpm)での6分間一定負荷運動を三試行実施した。なお、本実験は、生命体工学研究科の「ヒトを対象とする研究倫理委員会」で承認されている。主実験の三試行の一定負荷運動負荷テスト中においては、予定していた各種生理変量の測定(ペダル踏力、各種仕事量、酸素摂取量、血中乳酸濃度、大腿筋を構成する5部位の筋電図および外側広筋のNIRS信号波形)を行い、主実験は問題なく終了した。さらに、現在までのデータの解析では、ペダル踏力、外的仕事量および内的仕事量、VO2、血中乳酸濃度の解析・評価は終了し、筋収縮速度変化(ペダル回転数変化)条件との関係について検証中である。一方、大腿筋を構成する5部位のEMG解析とNIRSによる外側広筋における表層部と深層部の酸素化動態からの活動水準の階層性の解析についてはまだ残されてはいるが、平成24年度中に予定していた実験実施と実験の結果得られた基礎データ解析は概ね終了し、来年度(平成25度中)計画している残されたデータ解析・評価および国際学会発表予定としていることから、研究全体としては、「概ね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で予定されていた、平成23年度(負荷漸増運動テストと頻度漸増運動テスト)および平成24年度に予定された予備実験(負荷漸増運動テストによる被験者の作業能評価)および主実験(筋発揮張力一定で筋収縮速度変化を伴う一定負荷運動の3試行)をこれまでに終了している。また、平成24年度には、主実験の実施と平行して、平成23年度の研究成果を海外での国際会議で発表・公表した。一方、平成24年度の研究成果については、実験で得られたデータ(ペダル踏力、外的仕事量、内的仕事量、酸素摂取量、血中乳酸濃度、大腿筋を構成する5部位:外側広筋、内側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋、半腱様筋の筋電図信号波形および外側広筋のNIRSで得られた信号波形)の整理と解析が一部のみ完了しているものの、まだ全てのデータ解析が完了していない状況であり、最終年度(平成25年度)においては、残されたデータ解析を中心に研究を進めていく予定としている。さらに、これまで解析したデータを6月中旬頃までに見直しと再評価を完了し、これらの結果を国際会議(スペイン、バロセロナ:第18回ECSS:European College of Sport Medicine)で発表することにしている(これまでの研究成果の内容(abstract)を学会(ECSS)に提出し、発表が受諾された)。平成24年度上半期終了後、国際会議の発表結果を踏まえて、「運動条件に依存した大腿筋活動水準と全身的協関としての全身の酸素摂取量との関係」について検討し、研究全体の取りまとめと科学研究費で実施した研究成果を原著論文として作成し、学術雑誌に投稿する計画である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度と平成24年度に実施予定であった実験は全て終了している一方、収支状況報告書にもあるように、「次年度使用額」を平成24年度に実施した実験のデータに関して、完了していないデータ解析のための謝金(データの整理と解析のための人件費)として25年度分に計上することとなった。さらに、平成25年度配分予定の直接経費(50万円)では、平成25年上半期まで終了したデータ解析結果の一部の研究成果を国際会議で発表することが確定しているので、そのための旅費としても計上を予定している。さらに、平成25年下半期においては、検討課題として設定した「運動条件に依存する大腿活動水準と生理的応答の全身的協関」に関するデータと取りまとめを行うための人件費、および英文での原著論文を作成する予定であり、そのための英文校正費と校閲費として使用する予定となっている。したがって、平成25年度の研究費の使用計画としては(含「次年度の使用額」)、データ解析と分析のための人件費、国際会議への研究成果発表の旅費および英語論文校正および校閲のための経費として使用する計画である。
|
Research Products
(3 results)