2011 Fiscal Year Research-status Report
耐塩性イネにおけるシアン耐性呼吸の生理学ならびに分子生物学的解析
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23580021
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平井 儀彦 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (80263622)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イネ / 耐塩性 / シアン耐性呼吸 |
Research Abstract |
土壌の塩類化は世界で大きな問題となっているが,主要作物のイネは他の作物に比べて塩に弱いことが報告されている.このため,イネの耐塩性の向上が求められている.これまでにイネの耐塩性品種IR4595-4-1-13 (以下IR4595) は,感受性品種のMangasaに比べてシアン耐性呼吸が高く,活性酸素の発生抑制を通じて耐塩性の向上に関わると考えられた.一方,シアン耐性呼吸は,細胞pHの制御にも関与することが報告されている.また,細胞でのNa+の排出と液胞への隔離には,細胞pHが密接に関与することが報告されている.そこで、本研究では,塩条件下でのシアン耐性呼吸が細胞pHとNa+吸収に及ぼす影響を明らかにするため,蛍光試薬を用いて根における細胞pH およびNa+蓄積を解析する手法を確立するとともに,塩条件下でのシアン耐性呼吸が細胞pHに及ぼす影響ならびに根のNa+蓄積について検討した.その結果, IR4595と比較してMangasaでは根端部分と先端から1cm付近の両方で強い蛍光が認められ,1cm付近では木部部分が強く蛍光しており,これらの部分にNaが多く蓄積していることが示された.さらに,塩処理と同時にシアン耐性呼吸の阻害剤を与えた場合,両品種とも根のpHが大きく低下し,シアン耐性呼吸はpHの制御に密接に関与していると考えられた.さらに,Mangasaの根表面では,根端部分と先端から1cm付近の両方で塩処理によりpHが大きく低下したのに対して,IR4595の根端部分ではpH の低下が小さく,1cm付近ではpHの変化が認められなかった.これらのことから,シアン耐性呼吸は,根の細胞pHの制御に密接に関与することが明らかになるとともに,IR4595では塩条件下でも根の細胞pHが高く維持されており,このことが, Na+吸収の抑制に貢献しているものと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の計画として予定していた,根のNa局在の可視化と細胞質pHの方法の確立を行った.一方,耐塩性品種と感受性品種のシアン耐性呼吸に関与するオルターナティブオキシダーゼの塩基配列の測定を計画していたが,この実験は24年度に行うこととし,代わりに24年度の計画していたシアン耐性呼吸の阻害剤を用いた場合の根のNaとpH測定を行い,シアン耐性呼吸が細胞pHに密接に関わっていることを明らかにした.全体的には,おおむね順調な進展状況にあると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に予定していたオルターナティブオキシダーゼの塩基配列の測定を24年度に行うこととした.この理由としては,シアン耐性呼吸が細胞pHに密接に関与することを明らかにすること,耐塩性品種のNa吸収抑制にも密接に関係していることを明らかにすることがより重要であると考えたためである.なお,この実験は24年度に予定していた実験である.24年度は,まずはこのオルターナティブオキシダーゼの塩基配列の測定を行い,耐塩性品種と感受性品種のシアン耐性呼吸活性の差の原因を検討する.さらに,シアン耐性呼吸が細胞pHの制御を通じてどのようにNaの吸収抑制に関与しているかを調べる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度と24年度の一部の実験の順番を入れ替え,23年度に遺伝子の解析に用いる物品の購入を行わなかったため,23年度は予定していた金額よりも使用額が少なかったが,24年度には遺伝子解析のための物品が必要になる.さらに,プロトプラストにおける,Naの定量やpHの測定には,高価な蛍光試薬が必要であり,生理的実験と遺伝子解析のための試薬類に研究費の大部分を使用する予定である.
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