2012 Fiscal Year Research-status Report
耐塩性イネにおけるシアン耐性呼吸の生理学ならびに分子生物学的解析
Project/Area Number |
23580021
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平井 儀彦 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (80263622)
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Keywords | イネ / 耐塩性 / シアン耐性呼吸 |
Research Abstract |
イネは世界の主要な作物の一つであるが,他の作物と比較して塩に弱いために耐塩性の向上が求められている.これまでの研究で耐塩性のイネ品種IR4595-4-1-13 (以下IR4595) は塩感受性品種のMangasaと比べてシアン耐性呼吸が高い事が報告されている.これまでに,塩条件においてシアン耐性呼吸は活性酸素の発生抑制に関わることが報告されており,さらに,細胞内pHの制御を通じてイネの耐塩性の向上に関わることが,塩処理後の根表面のpH測定から示唆されている.しかしながら,根表面のpHが細胞内pHと一致するかどうかは明らかでない.そこで本研究では,イネ2品種を用いて塩条件下での根表面のpHと,根を磨砕して得られた液のpHを比較するとともに,プロトプラストを作成して,細胞内pH ならびに細胞内Na⁺濃度の測定法を検討した.その結果,塩処理12時間後のIR4595の根表面のpHはMangasaよりも高く,6時間後と24時間後でも同様の傾向があった.またSHAM処理では根表面pHの低下が認められ,シアン耐性呼吸のpH制御への関与が示唆された.2品種の対照区と塩処理区の根磨砕液のpHは5.6から6.1の範囲にあり,SNARF-4Fによる根表面のpH測定値より低く,品種間差及び塩処理の影響も根表面の測定と異なった.根磨砕液にはアポプラスト液が多く含まれると考えられることから,細胞内pHの測定が必要と考えられた.そこで,葉のプロトプラスト細胞内pHを測定したところ,塩処理1時間後にMangasaで低下する傾向が示され,SHAM処理では両品種のpHの低下が認められ,根表面のpH測定とほぼ一致した.しかしながら,細胞内pHの値にはばらつきが大きく,測定精度をさらに上げる必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生理的機構に関する研究では,シアン耐性呼吸の阻害剤を用い,根表面とプロとプラストのNaとpH測定を行い,シアン耐性呼吸が細胞pHに密接に関わっていることを明らかにした. 一方,AOXの過剰発現体の作出が進んでおらず,このためAOXが耐塩性に関係することを証明するための研究がやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,AOXの過剰発現体の作出が困難であることから,他国で作出されたAOXの遺伝子組み換え体を輸入して,AOXの生理的意義に関する実験を展開させる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
AOXの過剰発現体の作出の遅れに伴い,その材料を用いた研究のための予算執行が遅れている.今年度は,他国から,遺伝子組換え植物を輸入し,それを材料に予定していた実験を行い,生理的実験と遺伝子解析のための試薬類に研究費の大部分を使用する予定である.
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