2011 Fiscal Year Research-status Report
CAM型光合成における解糖系及びミトコンドリア呼吸の関与について
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23580023
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
野瀬 昭博 佐賀大学, 農学部, 教授 (80045137)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | CAM型光合成 / 日変化 / 制御 / 解糖系 / ミトコンドリア / パインアップル / デンドロビュウム / コダカラベンケイ |
Research Abstract |
パインアップルの解糖系に係わる6種類の酵素遺伝子について、PCR解析用のプライマーを設計し、解糖系の制御に係わると予想されるピルビン酸キナーゼのmRNA発現の日変化を調査した。mRNAの発現は、20時に最低となり、深夜0時に向けて発現が増大、その後は低下するという日変化を示した。このような日変化は、パインアップルのPEPカルボキシラーゼのリン酸化が深夜0時に最大となる従来の結果と同調した結果であり、パインアップルのCAM型光合成の日変化に解糖系の酵素遺伝子の発現の日変化が関与することを示唆する結果が得られた。 また、ME型CAMに分類されながら低酸素下でCAM型光合成を維持するデンドロビュウムのミトコンドリア電子伝達特性をコダカラベンケイソウと比較した。CAM型光合成のPhase 3の光合成を想定し、リンゴ酸を基質とした場合、コダカラベンケイはAOXへ,デンドロビウムはCOXへ電子を多く伝達している事が観察され、このことが低酸素条件下においてもCAM型ガス交換を維持する原因となっているものと考えられた。NADPHを基質としてミトコンドリアの外部から電子を与えた時の電子伝達は、両種で違いはなかった。次に、リンゴ酸とNADPHを同時に与えたときの電子伝達は、コダカラベンケイはAOXへ、デンドロビウムはCOXへ相対的に多く電子を伝達する事が明らかになった。さらに、その時にKCNによりCOXを阻害した場合には、ピルビン酸が共存下ではコダカラベンケイもデンドロビウムも最終的にはAOXへ多く電子を伝達するが、デンドロビウムではKCN添加直後はCOXへ多く電子を伝達し、KCN添加によって徐々にAOXへ電子を伝達するようになった。以上の結果は、コダカラベンケイとデンドロビウムの電子伝達系におけるリンゴ酸とピルビン酸に対する反応性の違いが低酸素感受性の違いに関係していることを示唆していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の代謝中間体の解析については、メタボローム解析を効率的に実施できるCA-MSの本格的な使用が平成24年度から可能となるために次年度に実施することとした。パインアップルの解糖系の遺伝子発現の日変化を解析するのに必要なプライマーの設計に時間を要し、mRNA発現解析は、制御酵素とひとつと予想されるピルビン酸キナーゼのみの日変化解析に終わった。しかし、6種類の酵素遺伝子のプライマーの設計ができ、次年度においては解糖系の遺伝子発現を追跡できる準備がととのった。最終年度に計画していたデンドロビュウムのミトコンドリア電子伝達系の特性について、コダカラベベンケイとの比較で電子のCOXへの流れの偏りを明らかにすることができ、学会発表を行った。以上のことを勘案して「おおむね順調に進展している」と自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、CAM型光合成の制御について従来ベンケイソウで明らかにされてきたPEPカルボキラーゼのリン酸化の昼夜変化で説明できないパインアップルやデンドロビュウムのCAM型光合成の制御機構を明らかにすることを目的としている。次年度以降も引き続き当初の計画に示した解糖系・糖新生系の昼夜逆転のメカニズムと昼間におけるミトコンドリア呼吸(リンゴ酸代謝と電子伝達特性)について解析を加え、CAM型光合成と呼吸の係りを解明する。さらにCAM・ミトコンドリアのリンゴ酸・アスパラギン酸シャトルによってもたらされるアスパレート・フォーマーのCAM型光合成における変異の存在を検証し、その生理的機能について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
パインアップル葉身における解糖系・糖新生系の昼夜変化と制御について代謝中間体濃度、関連する酵素活性及び関連遺伝子の発現特性、さらにはPFP及びPFKの阻害・活性化物資の細胞内濃度の日変化と活性制御特性を調査する。 制御環境下においたパインアップル葉身を3時間間隔で8回にわたり採取し、解糖系の11種類の代謝中間体及び4種類の酵素活性と遺伝子発現の日変化を調査から、隣接する代謝中間体濃度から関連する酵素反応の質量作用比(MAR)、自由エネルギー(⊿G)を算出し、対応する酵素の既知の情報と比較し、生体内における反応特性を明らかにする。特に、代謝中間体の定量については、CA-MSを用いたメタボローム解析を行う。得られた結果から、解糖系及び糖新生系活性の日変化制御に時計遺伝子が関与するか否かを明らかにするとともに、代謝中間体の濃度勾配に従っているのかを明らかにする。 デンドロビュウにおけるCAM型光合成におけるミトコンドリア電子伝達系に関する課題については、引き続きミトコンドリア電子伝達系の特性について調査を継続するとともに、phase 3におけるATP需要に係わると予想されるピルビン酸リン酸ジキナーゼ(PPDK)の細胞内の分布位置について免疫電顕法による解析を加える。このことから過去に明らかにしてきたPPDKの細胞内位置の違いが持つ生理的役割とCAM型光合成の関係を明らかにする。
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Research Products
(2 results)