2012 Fiscal Year Research-status Report
CAM型光合成における解糖系及びミトコンドリア呼吸の関与について
Project/Area Number |
23580023
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
野瀬 昭博 佐賀大学, 農学部, 教授 (80045137)
|
Keywords | CAM / ミトコンドリア / 電子伝達系 / COX / AOX / PPDK / デンドロビュウム / ATP |
Research Abstract |
本研究では,ME型CAMのデンドロビウム,Crassula argentea,コダカラベンケイのミトコンドリアにおける電子伝達メカニズムの違いを調査した.また,デンドロビウムにおけるPPDKの局在位置を同定した. NAD-MEによる脱炭酸を想定し,リンゴ酸およびNAD-MEの活性化剤であるNAD,CoA,MnCl2を同時に添加した時,KCNによる呼吸阻害率(%)は,デンドロビウムで77.0%,C. argenteaで2.8%,コダカラベンケイで0.7%であり,デンドロビウムで高いKCN感受性を示し,リンゴ酸酸化によって生じる電子が,デンドロビウムはCOXへ,C. argenteaとコダカラベンケイはAOXへ多く伝達される事を示していた.NADHおよびNADPHを基質とした呼吸にピルビン酸を添加すると,呼吸速度,RCR,ADP/O比およびKCN添加直後の呼吸阻害率は,デンドロビウムで有意な変化を示さず,C. argenteaとコダカラベンケイでは呼吸速度が増加し,RCR,ADP/O比、KCN添加直後の呼吸阻害率が減少した.この事は,C. argenteaおよびコダカラベンケイはピルビン酸によってオルタナティブ経路が主に制御され,デンドロビウムではCOXの活性がオルタナティブ経路の制御に深く関与していることを示している. C. argenteaのPPDKの局在位置はChlt型,コダカラベンケイはCyt-Chlt型である事が知られているが,本実験によって,デンドロビウムのPPDKの局在位置はCyt型であることが明らかとなった.細胞質に存在するPPDKに必要なATPは主にミトコンドリアから供給されている可能性があり、デンドロビウムでは,細胞質PPDKにATPを供給するため,COXへ電子を伝達しているものと考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ME型CAMの制御に対するミトコンドリア電子伝達系の関与を明らかにする一環として、低酸素下でCAMが消失しないデンドロビュウムの原因について集中的に解析を行い、リンゴ酸脱炭酸の結果生じるピルビン酸の糖新生系での回収を仲介するPPDKの細胞内局在性を明らかにするとともに、ミトコンドリア電子伝達系におけるAOX及びCOXへの電子分配の特性を明らかにした。ほぼ満足する結果が得られ、現在国際誌への最終的な投稿準備を行っているところである。 同時にCAM型光合成の制御に対する解糖系の関与をメタボローム解析と遺伝子発現解析から明らかにすることも計画していたが、解析法の中心となるCE・LC/MSでの分析法が、機器導入2年目で十分な解析精度が確立できずに、予備試験の段階にとどまった。また、遺伝子発現については、プラライマーの設計を終え、発現条件の確立までは達成した状態である。 以上の通り、本研究の中心的なトピックであったデンドロビュウムのミトコンドリアとCAM制御の関係については、十分な成果を達成できたが、パインアップルのCAM制御における解糖系の関与については、準備段階にとどまっていることから、おおむね順調という自己評価を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、CAM型光合成の制御について従来ベンケイソウで明らかにされてきたPEPカルボキラーゼのリン酸化の昼夜変化で説明できないパインアップルやデンドロビュウムのCAM型光合成の制御機構を明らかにすることを目的としている。前述の通りデンドロビュウムについては、当初の目的をほぼ達成できたことから、パインアップルのCAMの制御における解糖系・糖新生系の昼夜逆転のメカニズムについて集中的に解析を加え、CAM型光合成と呼吸の係りを解明する。さらにCAM・ミトコンドリアのリンゴ酸・アスパラギン酸シャトルによってもたらされるアスパレート・フォーマーのCAM型光合成における変異の存在を検証し、その生理的機能について明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
パインアップル葉身における解糖系・糖新生系の昼夜変化と制御について代謝中間体濃度、関連する酵素活性及び関連遺伝子の発現特性、さらにはPFP及びPFKの阻害・活性化物資の細胞内濃度の日変化と活性制御特性を調査する。 制御環境下においたパインアップル葉身を3時間間隔で8回にわたり採取し、液体窒素で固定し、-80℃で分析まで保存する。得られた試料は以下に述べる代謝中間体及びmRNA発現の分析に用いる。代謝中間体としてはF6P、F16BP、F26BP、PPi、Pi及びトリオースリン酸類[GAP、DHAP)、BGA、3PGA、2PGA、PEP]についてCA-MSを用い定量する。次に、隣接する代謝中間体濃度から関連する酵素反応の質量作用比(MAR)、自由エネルギー(⊿G)を算出し、対応する酵素の既知の情報と比較し、生体内における反応特性を明らかにする。また、2ヶ所の律速部位であるグルコキナーゼ、ヘキソキナーゼ、グルコース6ホスファターゼ、ピルビン酸キナーゼの4種類の酵素について活性及びmRNA発現の日変化を調査し、解糖系及び糖新生系活性の日変化制御に時計遺伝子が関与するか否かを明らかにする。さらにG6P含量の細胞内での濃度を推定し、PEPCの活性化との関係を定量的に解析する。以上のことにより、解糖系・糖新生系の昼夜変化がmRNA発現による生物時計の制御下にあるものか、あるいは代謝中間体の濃度勾配に従っているのかを明らかにする。 以上の通り、次年度は中間体定量のための消耗品費を中心に使用し、学会での成果発表旅費とその他経費として論文掲載に使用する。
|
Research Products
(2 results)