2011 Fiscal Year Research-status Report
イタリアンライグラスにおけるセルロース合成変異の分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
23580027
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
高橋 亘 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産草地研究所 飼料作物研究領域, 主任研究員 (70455319)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 育種学 / 遺伝学 / ゲノム / 細胞壁 / 植物 / バイオマス |
Research Abstract |
本研究では、セルロース合成系に変異を持つと思われるイタリアンライグラスのカマイラズ系統を分子遺伝学的手法により解析し、イネ科植物の細胞壁合成機構解明を試みる。(1)カマイラズ系統の特性解明 カマイラズ系統および既存の8品種・系統をワグネルポットに個体植えして育成した。予備試験の結果から、本研究で用いている系統のカマイラズ形質は茎葉の柔軟性が他の品種より極端に低く、特に出穂茎においてその違いが明らかであったことから、育成した個体を春化処理して出穂を促し、品種・系統間の比較を行った。開花期に達した出穂茎を個体ごとにサンプリングし、5本束にした際の物理的強度をフォースゲージにより測定した結果、カマイラズ系統の出穂茎は既存の8品種・系統の出穂茎が折損する負荷の55%程度で折損し、折損部が乖離するという特徴を示した。現在、この特徴が何に由来するかを細胞壁構成成分から明らかにするため、各品種・系統の飼料成分分析を行っている。(2)DNA マーカー解析用集団の養成 カマイラズと正常系統を交配して得た5つのF1集団を各集団につき50粒程播種し、集団内におけるカマイラズ形質の表現型分離を調査した。今回は出穂に至っていない育成途中の個体について葉の折損に関する予備調査を行った。出穂茎同様、カマイラズ系統の葉は柔軟性に欠き、折り曲げると折損部位の繊維が葉脈に沿って露出するが、正常系統にはそのような傾向はない。これを指標に各個体の葉の葉身を折り曲げて調査したところ、明瞭なカマイラズ形質を示す個体はどの集団にも存在せず、集団内において表現型分離を認めることが出来なかった。このことからカマイラズ形質は少なくとも優性遺伝しないことが示唆された。現在、出穂茎においてもカマイラズ形質の表現型分離が認められない場合を想定して、F1集団をカマイラズ系統に戻し交配し、新たな解析用分離集団の養成を試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
カマイラズ形質がF1解析集団において表現型分離しない劣性形質である可能性があることから、F1集団に由来する個体のカマイラズ系統への戻し交配の必要性が出てきている。ここまでは想定内であったが、カマイラズ系統の生育が当初の予想よりもかなり遅いことから、その分、次世代の解析用集団養成に時間がかかると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
飼料成分分析によりカマイラズ系統および正常系統の細胞壁構成成分を解析して系統間の違いを明らかにするとともに、既知の細胞壁合成関連遺伝子の発現解析を実施し、カマイラズ形質との関連を調査する。また、カマイラズ系統および正常系統を交配して得たF1個体をカマイラズ系統へ戻し交配してDNAマーカー解析用集団を養成した後、解析集団の形質調査、連鎖地図作製、セルロース合成変異形質のQTL解析を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、物品費・旅費・謝金(英文校閲、実験補助)・その他(プライマー合成)に使用する。なお、次年度に約59万円を繰り越すことになっているが、これは、カマイラズ系統の生育が遅く穂揃いも悪かったためにサンプリングの期間が長くなり、飼料成分分析が次年度以降にずれ込んだことと、解析用集団の再養成が必要になったことから、PCRプライマーの発注をしなかったために生じたものであり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
|
Research Products
(2 results)