2012 Fiscal Year Research-status Report
イタリアンライグラスにおけるセルロース合成変異の分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
23580027
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
高橋 亘 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (70455319)
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Keywords | 育種学 / 遺伝学 / ゲノム / 細胞壁 / 植物 / バイオマス |
Research Abstract |
本年度は変異系統の飼料成分分析を行った。その結果、変異系統の総繊維含量は他の品種・系統よりも低く、セルロース含量が他の品種系統の半分程度の値であることが明らかとなった。一方、ヘミセルロース含量においては他の品種・系統より高い値を示すことを見出し、本系統がセルロース合成の変異系統であることを確認した。 また本変異に関与する遺伝子座特定のためのDNAマーカー解析では、昨年度養成したカマイラズ系統および正常系統のF1集団において、出穂茎の強度調査および飼料成分分析を行ったが表現型分離が認められなかったことから、カマイラズ形質が劣性遺伝することが示唆された。そこで、各F1集団から個体を選び、シブクロスあるいはカマイラズ系統親個体へのバッククロスによりさらに世代を進め、15の解析集団(バッククロス5+シブクロス10集団)を養成した。このうちバッククロス由来1集団の表現型を調査した結果、表現型が1:1に分離することを確認できたことから、DNAマーカー解析に利用できる集団の獲得に成功したことが明らかとなった。 さらに本課題を推進するため、細胞壁合成変異(カマイラズ)系統における細胞壁合成関連遺伝子の発現解析をリアルタイムPCRにより行った。種々の遺伝子を解析した結果、リグニン合成関連遺伝子4CLの発現量が正常系統の50~60分の1に減少していることを発見した。本発現解析の情報を上記DNAマーカー解析に統合し、活かすことで、本小課題の研究の質がより高まると同時に進捗が加速すると思われる。なお、発現解析で得た本知見は、セルロース合成変異がリグニン合成にも何らかの影響を与えていることを示唆するものであり、セルロースおよびリグニンの同調的な合成機構解明の足掛かりになるものとして、学術および実用面において大変興味深いものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初、平成24年度はDNAマーカー解析中心に研究を進める予定であったが、劣性形質を解析するめの集団を養成した分、DNAマーカー解析そのものには遅れがある。しかし、それを補う形で、当初予定されていなかった二次細胞壁合成関連遺伝子の遺伝子発現解析を行い、変異系統のリグニン合成関連遺伝子4CLの発現量が特徴的であることを見出すことに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに養成した解析集団を用いて、SSRプライマーによる多型解析を行うとともに、解析集団における二次細胞壁合成関連遺伝子の発現解析を行い、変異系統に特異的な発現様式を示す新規遺伝子の有無を調査する。SSRにより遺伝子座を特定した後、イネのEST情報等により、比較ゲノム解析を行い、当該遺伝子座近傍のマーカーを高密度化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、物品費・旅費・謝金(英文校閲、実験補助)・その他(プライマー合成)に使用する。なお、次年度使用額165,430円は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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Research Products
(2 results)