2012 Fiscal Year Research-status Report
胚乳の植物体再生系を利用した新規倍数性育種法の開発
Project/Area Number |
23580029
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (50301875)
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Keywords | 胚乳 / 倍数性育種 / ハスカップ / 植物体再生 |
Research Abstract |
被子植物は重複受精により胚乳を形成し、2倍体の植物体であれば二つの極核と一つの精細胞が融合し、3倍性の胚乳を作る。2倍体の植物の中で形成される、この“胚乳の倍数性(3倍性)”に着目した。ハスカップの胚乳を供試し、組織培養することにより胚乳から胚乳の倍数性を保持した植物体が再生されることをこれまでの研究で示してきた。この培養系を利用し、さらに研究の展開を図った。 接合子と遺伝的に同一な胚乳組織の特異性が受精後のどの時点で決定されるのかという疑問に答えるひとつの手段として、胚乳培養の可能性について検討した。胚乳から植物体が再生させることができたことは、従来、栄養貯蔵器官のみにしか分化しないと考えられていた胚乳が遺伝的な可塑性を持ち、胚と同様に植物体になる能力を保持していることを明らかにしたものである。この現象の解明のために、胚乳分化のメカニズムの解明を試みている。近年、胚乳はゲノムインプリンティングの制御を受けることが明らかになってきた。花粉由来のゲノムと胚珠由来のゲノムが異なる遺伝子発現の制御を受けており、おそらくこの事象は胚乳を特徴づける重要な鍵になっていると予想される。そこで本研究では、これまでに確立した胚乳からの植物体再生系と、ゲノムインプリンティングの解析を組み合わせ、胚乳分化のメカニズムを明らかにする研究を展開した。ハスカップからfertilization independent endosperm (FIE)遺伝子ホモログのクローニングを行い、全長をシークエンスすることができた。さらに、胚乳培養過程におけるFIE遺伝子の発現解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに実験は進んでいる。これまでに胚乳培養を起点にした倍数性育種に関する論文(Hoshino Y., Miyashita T, Thomas TD (2011) In vitro culture of endosperm and its application in plant breeding: Approaches to polyploidy breeding. Scientia Horticulturae 130: 1-8)をとりまとめている。さらに、胚乳形成に関与するFIE遺伝子のクローニングについても研究を進めている段階にある。このように、おおむね順調に研究は進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
胚乳形成、胚乳培養時におけるFIE遺伝子のク発現解析について重点的に解析を進める予定である。すでにクローニングしたハスカップのFIE遺伝子を用いて、胚乳形成時および胚乳培養時およびFIE遺伝子の発現解析をリアルタイムPCRを用いて行う。in vivoにおける胚乳発達過程と胚乳培養時におけるFIE遺伝子の発現パターンの比較を行う。発現パターンの比較から、培養時における胚乳の脱分化のタイミングと再生時におけるインプリント遺伝子の関与について解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、物品費は研究に使用する消耗品費として用いる予定である。 旅費については、国内の学会において研究成果を発表するために使用する。また、研究打ち合わせ、情報収集のための国内旅費としても使用予定である。 ほか、研究補助のための謝金、論文投稿のための英文校正、分析依頼費等を見込んでいる。
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