2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 和弘 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (60242161)
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Keywords | 緑道 / 生物多様性 / 種組成 / 鳥類 / 移動路 / ランドスケープ・コリドー / 連結性 |
Research Abstract |
さいたま市内の緑道2ルートとそれに隣接する市街地、農地において、繁殖期の鳥類調査と植生構造調査を実施し、前年度越冬期に実施した鳥類調査結果とあわせて、植生構造をはじめとする緑道の状況が、鳥類の生息状況にどのように影響するかを分析した。また、玉川上水の一部区間(上流側、下流側、各5km程度)と、それに隣接ないし近接するパッチ状樹林地において、越冬期の鳥類調査を実施した。 さいたま市内の緑道での調査結果からは、緑道内で出現する鳥類の種組成や種多様性は、緑道自体の植生構造や人間活動に強く規定されるものの、緑道周辺の土地被覆のあり方にも少なからぬ影響を受けることが示された。とりわけ農耕地が隣接している場合、農耕地に主たる生息場を持つ種が一時的に緑道に飛来したり、緑道を生息場所や移動路として利用している種(特にヒヨドリ、キジバト)が隣接する農耕地で採食したりする行動が高い頻度で認められ、緑道が提供する樹林的環境と農耕地との複合が、それぞれが単独で存在するよりも鳥類の生息にとって有利であることが示唆された。 玉川上水上流側での調査からは、高木林的な植生が長距離に渡って連続して発達している緑道が越冬期の樹林性鳥類の生息場としてよく機能していることが明らかになった。全体が林縁的環境であるにもかかわらず、エナガ、ヤマガラ、コゲラ、ウグイス、アオジ、シロハラなど、東京都その近郊では良好な樹林地に限って見られる傾向が強い種が高頻度で記録された。下流側では植生構造の単純化に伴って鳥類の種多様性も低下したが、それでも隣接する市街地よりは鳥類の密度は高く、鳥類の生息場所や移動路としての緑道の重要性を確認することができた。なお、植生構造や周囲の景観構造と鳥類の種組成や種多様性の関係については、本年度他に調査を行った港北ニュータウン、おゆみ野の緑道の調査結果とあわせて現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査区間を若干短縮するなどの変更は行ったものの、当初期待していた成果が順調に得られつつあり、今後の発展や解析の進展が非常に楽しみな状況になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、玉川上水緑道の繁殖期の調査と植生構造調査を実施する。また、港北ニュータウン、おゆみ野や、さいたま市内の緑道などで、緑道内の鳥類の行動についてさらに調査を行い、鳥類の移動路としての緑道のあり方を明らかにしていきたい。可能であれば、隣接、近接する市街地やパッチ状樹林地での鳥類調査を行い、緑道における状況との比較を通じて、鳥類の生息場所や移動路としての緑道の役割をより明確にしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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