2012 Fiscal Year Research-status Report
ブドウの香り生合成調節機構の解明とその応用:革新的ブドウ栽培技術への展開
Project/Area Number |
23580038
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
鈴木 俊二 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60372728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 景子 県立広島大学, 生命環境学部, 助教 (50467726)
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Keywords | ブドウ / 香り / 3-メルカプトヘキサノール / 甲州 / ナイトハーベスト |
Research Abstract |
本研究は、日本に土着した醸造用ブドウ品種‘甲州’の特徴香 3-メルカプトヘキサノール(3MH)について、ブドウ果実における3MH前駆体の生合成経路およびそれを調節する分子機構などの未だ解決されていない基礎学問的な課題を解決するとともに、それらの知見をもとに、ブドウ果実に前駆体を多く蓄積させるためのブドウ栽培技術を提案する。平成24年度に行った研究によって、グルタチオン-S-トランスフェラーゼの触媒活性によりグルタチオンと2-ヘキサナールから3MH前駆体が生合成されることを in vitro で証明した。システニルグリシン抱合体を同定し、それを定量する方法も開発に成功したが、海外の競合者が類似技術を先に論文発表したため、現在、論文発表には至っていない。圃場試験において、果実中の3MH前駆体の含有量は、深夜から早朝にかけて増加し、日中に減少することを明らかにした。また、3MH前駆体の構成成分であるグルタチオンの量は、3MH前駆体の生成量に対応して増減した。これらのブドウを使った実醸造試験において、早朝に収穫したブドウから造ったワインの方は、日中に収穫したブドウから造ったワインよりも、約1.5倍多く3MHを含んでいた。近年、ブドウ栽培にとって比較的温暖な地域では、収穫したブドウが熱くなり品質が低下することを防ぐため、ブドウを冷たい状態で収穫する「夜収穫(ナイトハーベスト)」が行われている。本研究結果は、「夜収穫(ナイトハーベスト)」という収穫方法の科学的有意性について3MH前駆体を一例として世界で初めて証明したものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
グルタチオン-S-トランスフェラーゼの触媒活性によりグルタチオンと2-ヘキサナールから3MH前駆体が生合成されることなど、ブドウ果実における3MH前駆体の生合成経路の解明に関しては順調に進展している。加えて、3MH前駆体の生合成経路を調節する分子機構のひとつとして、日周性が関与する点を圃場レベルで明らかにした点も高く評価されると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、3MH前駆体生合成量を増大する栽培環境の特定を行うとともに、平成24年度で実施したが、まだ明確な最終結果が得られていない「3MH前駆体生合成系を活性化する鍵」を特定する。現在のところ、乾燥ストレスおよびUV処理が候補である。また、平成24年度で明らかとなった「3MH前駆体生合成の日周性」についての分子機構も明らかにする。現在、グルタチオン-S-トランスフェラーゼの日周性を確認している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度への繰越額として、131,092円が計上される。当該研究費が生じた理由は、平成24年度の消耗品費が少なく済んだためである。この繰越額を含めた平成25年度の研究費の使用計画は次のとおりである。 3MH前駆体の分離および定量に必要な消耗品として、HPLC分析に必要な有機溶媒とHPLCカラムを購入する。「3MH前駆体生合成の日周性」を解明するために、遺伝子解析用試薬類を新たに消耗品として購入したい。この購入費は外国旅費から回すことにする(外国旅費は計上しない)。設備備品の購入は予定していない。その他、年1回分の国内旅費、年1報分の論文投稿に必要な英文校閲費(謝金等)および論文発表に必要な研究成果投稿費(その他)を予定している。
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[Journal Article] Impact of harvest timing on the concentration of 3-mercaptohexan-1-ol precursors in Vitis vinifera grape berries.2012
Author(s)
Kobayashi, H., Matsuyama, S., Takase, H., Sasaki, K., Suzuki, S., Takata, R. and Saito, H.
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Journal Title
American Journal of Enology and Viticulture
Volume: 63
Pages: 544-548
DOI
Peer Reviewed
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