2014 Fiscal Year Annual Research Report
ブドウの香り生合成調節機構の解明とその応用:革新的ブドウ栽培技術への展開
Project/Area Number |
23580038
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
鈴木 俊二 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (60372728)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 景子 県立広島大学, 生命環境学部, 助教 (50467726)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 3-メルカプトヘキサノール / ブドウ / 香り / 日周性 / ストレス応答 / ワイン / グルタチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、醸造用白ブドウ品種で醸造されたワインで認められる柑橘系アロマの起因物質である 3-メルカプトヘキサノール(3MH)について、ブドウ果実における3MH前駆体の生合成経路およびそれを調節する分子機構などの未だ解決されていない基礎学問的な課題を解決するとともに、それらの知見をもとに、ブドウ果実に前駆体を多く蓄積させるためのブドウ栽培技術を提案することを目的とした。最終年度の研究では、ブドウ果実に含有する3MH前駆体の蓄積量が収穫タイミングによってどのように変化するか検討した。シャルドネ果実における3MH前駆体蓄積量は早朝で最も多く、日中になると減少した。3MH前駆体蓄積量の日周性は品種に関わらず調査したすべての白ブドウ品種で確認された。ブドウ栽培にとって比較的温暖な地域では、収穫したブドウが熱くなり品質が低下することを防ぐため、ブドウを冷たい状態で収穫する「夜収穫(ナイトハーベスト)」が行われている。本研究結果は、ナイトハーベストは柑橘系の香りが高い果実を収穫できる利点を持つことを証明した。一方、3MH前駆体の生合成経路に関与する鍵酵素グルタチン-S-トランスフェラーゼおよびγ-グルタミルトランスフェラーゼの遺伝子発現は3MH前駆体蓄積と同様の日周性を示さず、朝方と夕方に遺伝子発現量が高くなる傾向を示した。以上の結果から、3MH前駆体蓄積の日周性に生合成系は関与せず、未知の分解系あるいは代謝経路により制御されると推察した。昨年度までの研究成果は、3MH前駆体の生合成経路はある種の環境ストレスにより活性化されることを明らかにしている。この4年間の研究成果を総合的に捉えることにより、本研究は柑橘系アロマの芳醇な白ワイン醸造を目的としたブドウ栽培技術および醸造技術の改良に結び付くものと確信する。
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