2011 Fiscal Year Research-status Report
ユリの「早咲き性」進化と密接に関係する球根休眠性喪失の遺伝機構
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23580045
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
比良松 道一 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30264104)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 球根休眠性 / 早咲き性 / 遺伝的制御 / テッポウユリ / タカサゴユリ |
Research Abstract |
【球根休眠性のスクリーニング法の確立】4月~9月にかけてテッポウユリの南部系統と北部系統の2~3葉展開した一年生実生を15、20、25、 30℃、自然日長下で栽培し、出葉パターンを経時的に測定したところ、南部系統はいずれの温度でも展葉し続けたのに対し、北部系統は栽培温度が高くなるほど約4ヶ月間にわたり展葉しなかった。これは、テッポウユリの球根休眠性が遺伝的に分化していることを示唆している。また、テッポウユリ南部系統と酷似した展葉パターンを示すタカサゴユリ低地系統を同じ条件で栽培したところ、栽培温度が高くなるほど球根に対する茎葉への資源配分が大きくなる傾向が見られた。さらに、同じ実験を10月~3月の間に実施したところ、北部系等も南部系等もほとんど展葉せず、成長しなかった。したがって、25℃以上の温度と長日条件下で一定期間栽培した時の展葉速度および地上部への投資配分を測定することで球根休眠性の遺伝的変異の間接的な測定が可能であることが分かった。【交雑実生群の育成】テッポウユリと南部系統と北部系統の正逆交配、およびタカサゴユリ低地系統とテポウユリ北部系統との片側交配により得られたF1個体を育成したところ開花が見られ、その開花個体の自家交配によりF2稔実種子を多数得ることができた。現在、F2実生群を15℃で育苗中であり、これら実生群を用いて次年度の4月から予定している研究を遂行することが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のとおり、初年度に予定していた実験を計画どおりに実施でき、期待どおりの成果を得ることができたので。
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Strategy for Future Research Activity |
【交雑実生群における球根休眠性の分離の測定】1年目からスクリーニング栽培してきたF2、F1個体および交配親系統の経時的出葉数、スクリーニング栽培終了時の球根重(生重および乾物重)、球根直径、鱗片数を測定し、各交雑実生群における球根休眠性の分離を評価する。【球根休眠性に連鎖する分子マーカーの探索と連鎖地図の構築】各F2集団において球根休眠性が極端に強い系統と極端に弱い系統10~15個体を選抜し,バルク集団間多型の検出を試みる(1次スクリーニング)。多型が得られたプライマー組について、親、F2個体ごとにPCR反応と電気泳動を行い、球根休眠性を制御する遺伝子座(球根休眠QTL)の近傍に位置する多型マーカーを得る(2次スクリーニング)。【球根休眠性の集団間変異の詳細な評価】交配親として用いなかったテッポウユリとタカサゴユリの地域集団もスクリーニング栽培法で育成し、2種全体における球根休眠性の集団間変異の様相を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度繰越金196千円:成果発表のために参加を予定していた国際学会が年度をまたいで開催されたため、当初計画していた海外渡航費用を校費より支出することとなり、未使用分を繰り越して次年度の物品費に充当することにした。物品費746千円:上記研究目的を達成するために必要な、栽培用消耗品および実験用消耗品を購入する。人件費450千円:上記研究目的を達成するためにポスドク研究員1名を短期雇用する。
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Research Products
(2 results)