2012 Fiscal Year Research-status Report
ユリの「早咲き性」進化と密接に関係する球根休眠性喪失の遺伝機構
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23580045
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
比良松 道一 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30264104)
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Keywords | 球根休眠性 / 早咲き性 / 遺伝的制御 / テッポウユリ / タカサゴユリ |
Research Abstract |
【交雑実生群の育成】前年度得たF2個体の開花を調査したところ、全てが1年目に開花し、休眠性と非休眠性が分離せず、全ての個体が交配親として用いた非休眠系統のとよく似た葉形態を有していた。したがって、前年度得た種子が、交配の不手際による自家交配個体であった可能性が考えられた。そこで、テッポウユリと南部系統と北部系統の正逆交配、およびタカサゴユリ低地系統とテポウユリ北部系統との片側交配により得られたF1個体を育成したところ、今度は、強い休眠性を示し、1年目の栽培で開花しなかった。その結果、本年度内にF2集団を育成することができず、F2集団の育成は最終年度に持ち越された。現在、抽だいして着蕾したF2が10~20個体程度見られるので、これらの個体を自家交配、または株間交配することにより休眠性分離集団を育成していく。 【ABA代謝関連遺伝子の発現】 屋外で栽培したテッポウユリの南部系統と北部系統の1年生実生の葉を用いて、ABAの消長に関連する遺伝子の季節変動を調べたところ、北部(休眠)系統では、8月にABA合成経路の鍵酵素である9-シスエポキシカロチノイドジオキシゲナーゼ(NCED)遺伝子の発現が非休眠系統の10倍以上と有意に大きくなり、また、12月から翌年の8月にかけて、ABA異化に関わるABA 8'-ハイドロオキシラーゼの発現が非休眠系統よりも低くかった.このことから、テッポウユリにおける球根休眠性の喪失はABA合成や分解に関する遺伝的変異が原因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
F1系統が休眠性を示したためF2分離集団の育成が遅れている。今年度F2集団を育てることにより休眠性の遺伝解析をまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
【交雑実生群における球根休眠性の分離の測定】本年度スクリーニング栽培するF2個体および経時的出葉数、栽培終了時の球根重(生重および乾物重)、球根直径、鱗片数を測定し、各交雑実生群における球根休眠性の分離を評価し、F1個体と交配親系統と比較する。 【球根休眠性に連鎖する分子マーカーの探索と連鎖地図の構築】各F2集団において球根休眠性が極端に強い系統と極端に弱い系統10~15個体を選抜し,バルク集団間多型の検出を試みる(1次スクリーニング)。多型が得られたプライマー組について、親、F2個体ごとにPCR反応と電気泳動を行い、球根休眠性を制御する遺伝子座(球根休眠QTL)の近傍に位置する多型マーカーを得る(2次スクリーニング)。 【球根休眠性変異とABA代謝遺伝子の関連性の調査】休眠性分離個体を用いて、休眠性変異とABA代謝関連遺伝子の遺伝子型との相関性を確認する。 【総括】以上の分析をもとに、テッポウユリの球根休眠性の喪失の遺伝機構について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度繰越金178千円:本年度実施できなかった実験のために使用する。 物品費828千円:上記研究目的を達成するために必要な、栽培用消耗品および実験用消耗品を購入する。 旅費費150千円:上記研究目的を達成するためにポスドク研究員1名を短期雇用する。
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