2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23580047
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
橋本 文雄 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (70244142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 真義 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, チーム長 (40237475)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | チューリップ / アントシアニン / 化学分類 / 遺伝生化学 / 遺伝育種 |
Research Abstract |
チューリップ属品種および園芸品種について、系統学的あるいは遺伝学的な根拠から分類することは不可能とされ、人為分類に留まっている。本研究は、花弁の色素分布と品種成立の情報から系統的位置関係を把握し、また、交配雑種後代の色素生合成遺伝の情報を踏まえ、色素化学的な分類によるチューリップ属品種の成立を明らかにする。そのため、化学分類の指標として重要な主要アントシアニン色素14種類の化学構造を決定する必要がある。また、国内で販売されている約200 系統の園芸品種に加えて、富山県と新潟県で育成・保存されている品種並びに原種について、高速液体クロマトグラフ法により定性・定量分析を行う。クラスター分析の結果から樹形図を作成し、チューリップの系統的位置関係を解析する。最終的にチューリップ品種の成立を明らかにし、それらの系統的分類法の構築を試みる。1. 園芸品種と原種のアントシアニン色素の分析:アントシアニンの分析法は、Li, J.-B., 他. Phytochemistry, 69,3166-3171, 2008の方法で行った。チューリップ花弁の重量を秤量し、抽出溶媒(酢酸-メタノールの1:1 混液)で浸積後、抽出溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定性・定量分析した。2. 未知色素の抽出のためのチューリップ品種栽培:チューリップ品種を栽培し、相当量の花弁を材料として確保した。3. 未知色素を含む14 種類のアントシアニンの抽出・単離と化学構造の決定:花弁材料を用いてアントシアニンを単離するための分画を調整した。4. SAS 統計ソフトを用いたクラスター分析:Li, J.-H., 他. Phytochemistry, 71, 1342-1349,2010に記載のSAS 統計ソフトを用いたクラスター分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 園芸品種と原種のアントシアニン色素の分析:既知色素は、標品と直接比較することにより、(1)ペラルゴニジン3-ルチノシド (以下Pg3R)、(2)ペラルゴニジン3-ルチノシド-2"-アセテート、(3)シアニジン3-ルチノシド、(4)シアニジン3-ルチノシド-2"-アセテート、(5)デルフィニジン3-ルチノシド (以下Dp3R)、(6)デルフィニジン3-ルチノシド-2"-アセテート (以下Dp2"A)、(7)デルフィニジン3-ルチノシド-3"-アセテートと同定した。2. 未知色素の抽出のためのチューリップ品種栽培:平成24 年3月に開花した4 品種約2,000 球分のチューリップ花弁を採取した。3. 未知色素のアントシアニンの抽出・単離と化学構造の決定:未知色素は、a~gと仮称する7種の主要アントシアニン色素であり、これらの501nm~529nm の可視部吸収スペクトルデータから、色素a、b、dおよびfはシアニジン(以下Cy)をアグリコンとする配糖体、また、色素c、eおよびgはペラルゴニジン(以下Pg)をアグリコンとする配糖体と推定した。また、色素fについて、特許文献のデータと比較することにより、cyanidin 3-O-(3"-O-acetyl)-rutinosideと推定した。4. SAS 統計ソフトを用いたクラスター分析:78個体(系統)のチューリップ花弁のアントシアニン色素についてクラスター分析を行った結果、A~Cの三つのサブクラスターを形成し、サブクラスターAは、Cy型およびPg型色素の混在する品種群、サブクラスターBは、Pg型色素を中心とした品種群、サブクラスターCは、紫赤色および赤紫色系品種群(Dp2"Aを比較的多く含有するグループとDp3Rを主体とするグループ、並びにDp型が主体ではあるがCy型を比較的多く含むグループ)の3グループに大別された。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 園芸品種と原種のアントシアニン色素の分析:原種の一つであるプルケラ属(8系統)について分析を行う。また、14種の園芸品種について分析を行う。2. 未知色素の抽出のためのチューリップ品種栽培:平成25 年度も引き続き、多数球のチューリップを栽培し、花弁を試験に提供する。3. 未知色素類のアントシアニンの抽出・単離と化学構造の決定:赤色品種‘バルバトス’および桃色品種‘コンプリメント’の花弁を採集し、色素を抽出する。7種の未知アントシアニン色素(a~g)を単離するため、オープンカラムクロマトグラフィーの方法により精製を行う。単離されたアントシアニンは、核磁気共鳴スペクトル法、質量分析法などのスペクトル法を用いてその化学構造を決定する。4. SAS 統計ソフトを用いたクラスター分析:本年度分析予定のプルケラ属(8系統)と14品種のデータに平成23年度に分析した78個体(系統)のデータを加え、クラスター分析を行う。その結果から、原種との関係を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品は、アントシアニンの単離・精製のための溶媒類または固定相ゲルを主とし、また、チューリップの栽培用球根を花弁の材料として調達する。SAS の統計ソフトについて、当該研究室が平成18 年度に導入し、毎年、研究室独自に契約更新・保守しているものを本年度も再契約し、引き続き使用する。国内旅費は、共同研究者との研究打合せ(鹿児島~つくば)、研究協力者との討議(鹿児島~富山及び鹿児島~新潟)、並びに園芸学会等での成果発表(鹿児島~東京)に使用する。外国旅費は、平成24年度の計画はない。謝金として、平成24年度は、専門知識を有する大学院生を実験補助者(1 名)、チューリップの資料収集・整理(1 名)、チューリップのデータ解析(SAS 統計処理等)のための研究補助者(1名)等の雇用を計画している。
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